身・体の異変!?"葉月來愛"と佐藤太一!!
誰にでもありそうな変哲のない出会い。そこから、発展して付き合うという有り触れたシーン。ドラマや漫画みたいにはいかないよね……
そう思ってた────
まさか、こんな波乱なストーリーになるとは微塵にも感じてなかった。選ばれた私達の特別なストーリー。嬉しいような悲しいような……
ここで時が止まってハッピーエンドで終わればいいのに……
小さな小屋で私は指輪を彼氏につけた。
◇◇◇
それは大学生になって1年半が経った頃だった。未だに彼氏の出来ない私は幸せな大学生活を謳歌することが出来なかった。
平日。学校に行って授業を受けて、終わったら家に帰ってくる。帰る頃にはクタクタだ。すぐにベッドにダイブする。そこで疲労をベッドに吸収して貰った後に授業で出た課題をこなす。やるべき事をやってたらいつの間にか就寝時間となっている。
私は寝る前にスマホをいじって友達とLINEをするのが日課だった。布団に寝転がってスマホを持った手を上へと伸ばす。
彼氏が出来ない……。友達皆には彼氏がいて自慢をしている。焦ってもなんにもならない。はぁ、と溜息を放つと同時にスマホを落としてしまった。
意外に重い塊がおでこに衝突した。「あいたっ」と思わず声を出してしまった。
さらに溜息が出た。
「どうして私には出会いがないんだろー」
今日も変わったことが何も無いこの日は終わった。明日も何も変わったことはないんだろうな…と思いながら私はLINEを打ち込んでいた。いつしか私は寝落ちしていた。
朝がやって来た。
私は冴えない頭を起こす。
休日。朝起きてすぐにバイト……。パン屋の元でアルバイトしてお金を稼ぐ。昼ご飯は賄い。帰ってくるのは夕方。帰ってきたらもうそれ以上の動く気力がない。それが土日の2日間。
祝日になれば休みとなる。友達と一緒に……、なんて出来なくて皆彼氏と遊んでる。私は家族と一緒に買い物を楽しむ。
そうして、変わらない日々が流れていく。
溜息しか出ないな……私の日常。
◇◇◇
秋風で枯葉舞う季節。
学校ではついに初のゼミが始まる。私はゼミの授業が行われる教室へと向かった。
部屋に入るとすぐに色んな声が響く。小さな教室に密集した生徒達がすぐに友達を作っている。
「玲弥……。それはないって!!」
私はその声がする方を見た。
見た目は少しタイプ。一目惚れに近いけど一目惚れではない。私の目に映る彼こそが"佐藤太一"だった。
けど、すぐに話すなんて出来ないし、そもそも私コミュ障だし、彼に近づく間もなくもう外にある葉は全てなく裸の枝だけとなっていた。ただ、冷たい風が外には絶えず吹いている。
私は溜息をついた。
相変わらずの自分が嫌になるから……だけでなく忘れ物もしたからだ。先週配られたゼミの資料。それを今週も持ってこいということだったのに、、忘れてしまったーー!!!心の中で動揺し溜息をついていた。
「今日は前回の資料を使います。持ってきましたか?」
私は「忘れました」と手を上げる。周りを見渡す。数名もつられて手を上げた。
「そうですか……。予備を忘れたので誰かに見せて貰いなさい」
そう言うと、忘れた生徒は近くの子に見せて貰った。そして、私のゼミの友達も近くの子に見せて貰うために移動し、私は取り残された。
───ヤバイ!!どうしよう……
「忘れたの?見せよっか?」と太一は見せようとしてくれた。
動揺を隠しつつ「あっ、ありがとう」と見せて貰った。遂に、目星つけていた人と初喋りが出来た。
それを機に私は太一と近づいた。まあ彼氏彼女という関係がすぐに結べる訳でなく、私はただの女友達程度にしか思われていなさそうだった。
3年生となった。
このまま友達関係じゃいられない。私は我慢出来なかった。だけど、告白の勇気はなかった。告白される確率はとても低そうだから告白しないといけないのに、勇気が出ない。
その日、バレンタインという記念日に乗っかって告白することにした。
ベタ……だけどそれ以外には思いつかない。
私は本命チョコを懸命に作り、そのチョコに気持ちを乗せて太一に渡した。何を言ったかは憶えてないけど、恥ずかしかったことは分かっている。
答えは中途半端に返された。確か「ちょっと考えさせて」だった気がする。
私は不安で胸がいっぱいになった。
後日、私は太一から呼び出された。
ついに私の告白の結果が返される。この気持ちは入試のテストで合否の封筒を開けるのと同じものだった。
休日のキャンパスはいつもよりも活気がなく、静かに感じられた。
恐る恐る約束の場所へと行く。
見通しのいいキャンパスの屋上……ではなく、狭いゼミの教室の中だった。そこには私と太一しかいなかった。
「前の告白だけど、なかったことにしてくれないか?」
太一の第一声はそれだった。
あまりにもショックが強すぎて私は石になりかけた。いや、石になって砕け散ったように感じられた。
胸が辛さ、悲しさ、苦しさで満たされる。泣きたいのに泣けなかった。辛い、、、涙が溢れそうなのに心で我慢している私がいる。
「あのさ……言い難いけど、」
太一は目線を逸らす。人差し指でこめかみを掻いていた。そして、私の近くにいた。
「「俺と付き合ってくれないか?」」
──っえ?
フラレタと思ってた。だから、辛かった。けど、違った。この状況が飲み込めない。
「いや、やっぱ告白って男の俺からやった方が示しがつくのかなぁってさ。だから、俺からやりたかったんだ……」
理由はとやかく告白は成功した。私は辛さで溢れた器の中に辛さを溶かす嬉しみが注ぎ込まれた。いつしか幸せな黄金の液体で器は満たされた。
「とにかく、ありがとう────」
私は太一の手を取った。嬉しさを表現してもまだ足りない。
太一は頬を赤くしながら照れ隠しで目を逸らす。そんな所もカワイイ。
「そう言えばなんだけど、何て呼べばいいかな?」
「今まで通りで"太一君"でいいよ!!」
「分かった!!!」
これが今でも君つけする理由だ。
「それじゃあ、俺は何て呼べばいい?葉月?來愛?────さんづけ?」
「じゃあ……"ら" "な"でいいよ!さんづけもいらない!!」
「分かったよ、──來愛」
私の心は不思議な感情で覆われた。心は身体に影響を及ぼす。私の身体に異変が起きた。思う以上に"身体が軽くなる"という異変だった。
次回予告
漫画やドラマのようにはいかない。そう思ってた葉月來愛に転機────
それは幸か不幸か……
ネガ発言!!
to be continued