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に・せ物の願い!葉月の選ぶ選択肢!!

 大樹は足を出す。

 それに合わして俺らは足を一歩下げる。


 刀の先が俺に向けられる。

 葉月に腕をギュッと繋がれている。重力の半分、俺に身を委ねている。


「邪魔……、そういや言い忘れてた。君を解雇するよ。今からは部外者だね。部外者はさっさと消えてくんない?」

 大樹が鋭く睨む。

 俺らはもう硝子窓を背にしている。硝子を割って外へと出るのは俺には出来るが葉月には出来ない。飛び出す時に硝子の破片が皮膚を切り裂き怪我をしてしまう。

 つまり、目の前の大樹をどうにかしないといけない。

 大樹は攻めてこない。俺を殺すことは認められていても、くっついている葉月を殺すことは認められていない。攻撃すれば葉月にも被害が及んでしまうため攻撃出来ずにいるのだ。

「ほんと、邪魔────」

「私は太一君を守る。そのための方法は厭わない」

 大樹は苛立ちを顔に出した。

 大樹も下手に動けないだろうが、俺らも下手には動けない。葉月がいても、身体全部を守れる訳ではない。絡めてない反対側の半分の身体は格好の的である。

「私を殺せば犯罪者になるでしょ?だから、下手に攻撃出来ない。違う?」

「ああ、そうだね。けどさー、そっちもそっちで下手に動けば片方の身体を切り落とされ逃げるのに不祥が出る。逃げた後のことを考えると僕を通って逃げることは出来ないよね……」

 お互いにこの状況で動けない理由を分析している。どう動くが、それを分析されずに動くことが求められていた。


「僕は警察と変わらない地位を持っているんだよ?それに抗うなんて……君は間違ってるよ!《《正義》》のために太一から離れろ!!」

 大樹はどうにかして葉月を俺から引き離そうと声をかける。それも乱暴に上から目線だ。


「正義って……?刀を持つことは許されないよね。それだけで悪じゃないの?」

「僕は特別に許されているんだよ。テロ消滅法(※オリジナル)によって、僕は警察と同等の地位を手に入れ刀を使用するための申請が通ったんだ。

 その権利の使用は特別手配の佐藤太一にのみ許されている。そのための刀だよ。

 僕は正式に刀の所持と使用を認められているんだ!つまり、僕は悪じゃないんだよ!!」

「けど、殺すことを正義とするなんて正義とは思わない!!」

「僕の正義は大衆の正義だ。小さな正義の意見は聞いてない!」


 大樹は刀を持ってない方の手で鞘を握る。

 その鞘を腰から離し、そして俺と葉月の絡む場所へと投げてきた。

 勢いよく鞘が飛んでくる。

 俺は葉月がその鞘に当たらないように、俺が鞘を避けるため、俺は葉月を軽く押した。

 葉月は軽く尻餅をついた。

「ごめん──、それと大丈夫かっ!!?」

 俺は葉月に近づこうとしたが、その間に現れる大樹が阻んだ。大樹の思い通りに葉月が引き離された。


 鞘は勢いよく飛び、硝子を突き破り外へと飛び出す。硝子破片が内部にも飛び散った。硝子の破片は光を反射し大樹を輝かせた。

「予想通りだね。彼女を守るため?自分を守るため?どんな理由であれ、鞘を投げれば必然的に引き離される……。後は、僕の領域さ」

 刃が皮膚を掠る。小さな鮮血が飛び散る。その血はすぐに止まるが、すぐに新たな小さな鮮血が飛び散った。

 熟練された刀捌きを目で追うことが出来ない。

 ただ、四肢を切られることはなく、刃が軽く掠るだけで済んでいる。

 その攻撃が何発か続いたが、全て奇跡的に掠るだけで助かった。そして、その攻撃をいつしか感覚で避けていた。

「ちっ、慣れてきてるのか……」

 目では見えないその攻撃。俺は感覚でその攻撃を避けていた。

 よく分からないけど、大事に至る攻撃が何処にくるか直感で感じている。お陰で軽い攻撃しか当たっていない。

 俺はその直感を信じて避けていた。

 目では追えない攻撃も少しずつ残像として見えるようになっている。


 どんなに速いものを見続ければ、人の身体は少しずつその速さに目が慣れていく。感覚がそれを追いかける。

 それは目に限ったことじゃない。身体に負荷がかかってもいつしかその負荷は軽くなる。同じ重さのバーベルを持ち続ければ、いつかは軽く感じる。……のと同じ容量だ。

 それには人間としての限界値内での話だ。

 勿論、大樹という人間の放つ刀捌きを避けるのも人間の限界値内の話であった。


「無駄に攻撃を外しすぎたね──。仕方ない使うか……畔川流居合……」

 そう言って、大樹は刀の先を地面に向け身体の重心を少し落とした。そして、自然を吸い込むように呼吸や動きが静かになった。


 俺は避けることは出来ない。

 もう大樹の間合いの中だ────


 葉月はさっきまで俺らとは距離を開けていた。それもそうだ。下手に近づけば擦り傷だけでは済まされない。それほど危険だった……

 にも関わらず、葉月は大樹に近づいていた。

 近くにいる葉月のことを大樹は気付いてなさそうだ。俺を斬るために集中している。

「『新闘龍切────』」

 大樹は目を開けて刀を前に向けた。刀は俺を捉えていた。


 パリーッン、と響く硝子が割る音。

 破れた窓から陽射しが射し込む。宙を漂う破片が光を七色のスペクトラムに分けていた。


 刀を持ちながら二階を見る大樹。重力が大樹を地面に叩き落とす。葉月は落ちていく大樹を冷たく見つめていた。

「太一君を助けられるなら、私は──罪を犯しても構わない。もう私は縛られない。」

 葉月は大樹に近づいて、思いっきり外へと押し出した。

 その勢いと、大樹の攻撃しようとした時の勢いが加わり窓を突き破って外へと飛ばされた。

 鈍い音が響く。

 日差しが葉月を照らしていた。


「來愛……。どうして?」

「私、見てることしか出来なくて、そして結局失うのが嫌だった。もう私は失わない。これが幸せを掴み取る選択肢だと思ったから」

 優しく微笑む葉月。

 俺は心が痛くなった。俺が弱いせいで、葉月に辛い選択を与えてしまった。

 俺は柔い光にうたれた葉月に近づいた。そして、「ごめん、ありがとう」と囁いた。

「気にしないで!これは私の選んだことだから!!さあ、逃げようよ!!!」


 優しく微笑む葉月を見ると俺の心は癒される。

 いつの間にか俺も太陽の日差しに、柔い光にうたれていた。

次回予告


 事務所から逃げたはいいが……

 唯一の逃げる方法の隆志らはダウン、車は破損。


 そして、辛うじて意識のある大樹。


 どうなる?太一と葉月────


  もう後書きのネガ発言がネタ切れしてきた

to be continued

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