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た・い樹と太一の心理戦────

 探偵や捜査一顆の警察が目的の人や犯人の尾行及び追跡のために張り込む。軽いパンと牛乳を片手に腹を満たす。俺らはそんな気分だ。

 俺はフードで身を隠しながら、八茂や隆志とともに必要なものを揃えたりした。

 今は車の中で偵察中だ。

 カーテンをチラッと捲り目的地を眺める。目だけが覗く。

 その時前列のカーテンから隆志の顔が出る。その表情は少し焦っている。

「バレたかも知れない。少し移動するぞ!!」

 そう言ってアクセルを踏んだ。

 事務所からは離れた人の少ない裏路地へと車を停める。


 隆志は後列に顔を乗り出した。焦っているのか丁寧な言葉は崩れていた。

「どうする!?大樹に尾行していたのがバレてしまった!!」

 予想外の出来事だ。これで大樹が事務所から出ないと作戦は失敗に終わる。

 シナリオでは大樹が事務所から出た後に俺ら三人で葉月を救出して隆志の家へと身を隠す参段だったのだが……

「マジか──。隆志が車を発信して俺と八茂で助けに行くのはどうだ?」

 時間がない。大樹が王手をかける前に作戦を実行しなければならない。

 その時、車をノックする音。

 隆志はカーテンを閉めて前列へと戻る。そして、ドアを開ける音……すぐに後ろの席が開けられた。

 俺らは焦る。何を考えているのだ?もしかして、ここまで隆志の考えた"俺"を嵌めるための罠!?


 そんなことを考えたがすぐに違ったことが分かった。外には《偽物》の俺と隆志が立っていた。隆志はその偽物。後ろの席に座らせるとドアを閉めて、また運転手の席へと戻っていった。

 その偽物は髪を金茶に染めていた。大学生を感じさせる服装で、耳にピアスが見える。手には黒くGZと跡になっている。左腕はないようで服の袖を縛っている。そして、右足にはオレンジと水色のミサンガが巻かれている。

「俺はGZ-791。來愛は守れなかった……。けど、諦めていない。今度こそ助けるために…俺はお前に協力する。」

 GZ-791は俺を見る。そして、あることに気付く。

「お前の右手……GZじゃない?もしかしてLQ!?」

「そうだ!俺はLQ-133。正真正銘《本物》だ。悪魔と切っても切れない縁のある畔川氏が言っているんだ。多分、間違いないだろう。」

「そうか。良かった。やっぱり、來愛を救うのは《本物》だよな────」

 その俺は天井を眺めた。無力な自分に何かを言い聞かせるように。

「俺は長く苦しんだ。そして、導き出したのは……來愛を幸せに出来るのは《本物》しかいないということ。來愛を幸せにするために絶対に救ってくれ!!」

 そう言って右手が俺の手に置いた。少し笑ったように首を斜めに傾けていた。


 GZ-791は三番目に生まれた俺である。そして、最終的に佐藤太一として家も今までの生活も得たのが彼であった。そんな彼に何が起きたのだろうか?

 俺は謎めいた。


 その時、カーテンから再び顔を出す隆志。それを見たもう一人の俺はカーテンで閉ざされた暗い空間で口を開いた。

「佐藤太一が一人、それに共犯が二人と言うことがバレてますよ。」と丁寧に隆志へと伝える。

「やはり……か。」

 隆志は下を向く。

 GZ-791は下を向く隆志を見つめて言った。「だから、俺らが囮になって《本物》の太一に來愛を救って貰う作戦にしませんか?」

「なるほど……。バレているのは私と八茂君と太一君一人(・・)だけ。もう一人途中で加わってることなど大樹は分かっていないですからね」

「はい。カーテンをわざと開けて俺らの姿を見せていきましょう。」


 そういうことなら俺はここから出た方がいいな。

「それじゃあ、決行は今すぐがいいと思う。遅いと命取りになるからな。だから、俺はこの車から出て別行動をする。」

 俺はミニバンの後ろのドアを開いた。その時、もう一人の俺が口を開いた。

「俺がマトリョーシカ人間となったその日、來愛とのデートで貰ったプレゼント置いてったよな?」

「ああ、あれはそこにいたお前が貰うべきだと思ってな……」

「あれ、ミサンガだったよ。偽物の俺には荷が重すぎた。來愛のことは頼んだよ。」

 だから、その俺はミサンガをつけているのか。それと、さっきからの《本物》が來愛を救える。偽物には救えない。というメッセージが伝わってくる。彼に何があったのだろうか?と再び頭を過ぎる。


「た~いちっ!これも受け取って!!」

 八茂はケータイを投げた。そのケータイをキャッチする。

「それはヤモケータイ!!隆志さんとは連絡出来るからそれて連絡を取り合うってことで!!」

 俺はケータイを貰った。これで隆志達と連絡が取れる。

 そして、隆志は顔を出して優しく微笑んだ。

「あなたなら大丈夫────」


 俺は彼らの想いを受け取りドアを閉めた。

 車の中のカーテンは閉められ全方位から中が透ける。車のアクセルは踏まれ、途方のないどこかへと進んでいった。

 一人となった俺はフードで身を隠しながら慎重に進んでいく。


 そして、事務所へと入り込んだ。

「さて──大切な人を返して貰おうか」


 手にはスタンガンを構える。

「誰だ!?」という職員らしき者達の声。

 職員は少数で手で数えれる程しかいない。大樹は隆志達を追いかけて、それに何名かはついていったのだろう。ここにいるのは手で数えれる程しかいなかった。

 俺はフードを取り払う。

「俺はマトリョーシカ人間の佐藤太一さ──。ここで火を放てば、お前らもひとたまりもないんじゃないか?さあ、返して貰うぜ!!」


 近づく職員をスタンガンで気絶させながら、俺は事務所を進む。事務所は二階建てだ。俺はひとまず二階へと上がった。

「來愛ー!」と叫ぶ。

 俺は二階へと来た。そこは大樹の座るであろう高価な椅子やデスクが轟轟と置いてあった。目の前に映る全面を占めるガラス。

 俺はそこにいた片手で数えれる程の職員を気絶させた。二階には葉月はいなさそうだ。そう思って踵を返すとそこには葉月が立っていた。


「あなたはどの太一君?」

 葉月は困惑したように聞いた。

「俺は原点の太一だ。來愛を助けに来た────」

「凄いね。私の側にいた太一君はあなたに託してた。そして、本当に来るなんて、、、やっぱり太一君って凄いよね。」


 何処か悲しげな表情な葉月。

 俺はそっと近づいた。


「逃げてて、ごめんな。けど、今度こそ逃げない。俺は來愛を離さない────」

「ありがとう。私、太一君が増えてってどうすればいいか分からなかった。誰を信じればいいか分からなかった。」

 葉月の瞳から雫が垂れ落ちる。

「太一君を代表して受け取って!こんな私を好きになってくれてありがとう─────」


 職員は気絶している。その間に葉月から今までのことについて聞いた。

 そんな時、葉月はあることに気付く。

「ケータイ、光ってるよ?」

 俺はすぐさまケータイを見た。そこには信じられない報告がメールで届いていた。着信履歴があったので電話で通じなかったため諦めてメールで送ったのだろう。


「來愛──マズイ!!」

 俺は葉月の手を取り事務所から離れようと進むが、そこにやってくる大樹。大樹は階段を上がり終わり、さらに俺らを追い詰めていく。

 俺らはガラスを背に後ずさりしていく。


 大樹は隆志達の罠に引っかかり、車を追いかけた。だが、大樹の非情な作戦で死者を出してから、ここへと戻ってきた。



「もう逃がさないよ────」



 大樹は刀を片手に持ち、俺を睨んだ。

次回予告


 囮となった隆志達。

 彼らに何があったのか────!?


 大樹と隆志との戦いが幕を開ける。


 そして、隆志の取り出すヨーヨー。それにはどんな意味が秘められているのか?

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