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身・体の異変!?"こけし"と畔川二太!!

 ムカシムカシある所に人々に害を仇なす霊がいた。四足の忌々しい殻に覆われている。人を見下す巨大な身体。大きく腕を振りかぶると土埃を回せながら無力な人間を飛ばしていく。

 柔らかな土々を抉り取り、木と藁で建てられた簡素な家々を破壊し、みすぼらしい人々の灯火を奪っていく。

 何が起きたのか分からず逃げ惑う人々。彼らにはその霊が見えていなかった。ただその悪戯を神による無差別な攻撃と信じ込み、無抵抗に逃げるしかなかった。


 平安時代──

 この世界は少なくとも平民は続く不毛作と流行した病気によって飢饉を味わっていた。霊の攻撃もまたそれに付随したものだと信じ込むしかなかった。

 とある一派の人間を除いては……

「東夷!西戎!南蛮!北狄!華夷を閉じ込む四つの異邦人。彼らに秘められしそれぞれの力を今ここに集結させる!!」

 霊の前に立つ若い男。唐笠を被り竹を口に挟む。手には不思議と力が漂う紙切れを持っていた。その紙切れを振ると頭の中が支配されているように感じた。

 蒼き龍、素き虎、朱き鳥、玄き亀が頭に浮かんでいく。その霊の足元にはいつの間にか星型のマークが現れていた。そのマークは煌びやかに輝いていく。

 その霊は焦り嘆く「誰だ!!お前!!!」と。

 そもそも霊を見ることの出来る存在?さっきまでは見られることすらなかったのに。

「我、陰陽師に仕える者なり。青龍!白虎!朱雀!玄武!そして、麒麟!!虚ろを滅ぼせ!!!」

 陰陽師──彼はその霊を浄化させた。ただ、その魂だけを残して。



 その術には特別な力が込められていた。

 霊体を持つことが出来ず誰かの体に取り憑くしか人の世に干渉出来ない。

 取り憑くためには条件があった。相手に自身のことが見えていること。意識を向かせないとただすり抜けるだけになる。次に、乗っ取る相手が自身よりも容量が上のこと。人間なら殆どクリアする課題だ。

 たった二つの条件をこなすことが全く出来ない。

 殆どの人間には取り憑くことが出来ない。もし霊を見える存在がいても陰陽師の血筋など霊魂を滅ぼすことができる力を持つ者の可能性が高い。


 そのせいで何も出来ずに長い時が経った。


 復活する時には世の中は江戸時代と呼ばれる頃となっていた。霊魂はこけし人形に移る。長い年月を掛けてこけしへと入り込むことが出来るようになった。こけしを見た者の身体に取り憑いた。そして、その身体の分身を起こし、心の中で意識を改変し、支配する幕府への反乱を企てたりした。

 結果、数うち勝る幕府による返り討ちにあって取り憑いた者は死んだ。その時、火が弱点ということもバレた。すかさずこけし人形へと移り、また取り憑き、分身して幕府を狙う。それを楽しんだ。

 いつしか妖怪"こけし"と呼ばれるようになっていた。

 弱点は火──。いつしかそのことが公にバレていく。いや、"こけし"のことが人々一人に知られていく。

 ある日、幕府の繰り出した祈祷師が目の前に現れる。

 和服に身を包んだ優しい顔立ち。だが、行動はいざ知らず霊魂を取り憑いていた人間諸々封印してしまった。

 再び長い時を過ごすことになる。取り憑いた人間は長い時を得て死に、屍となっていた。何も出来ないその時に"何でも叶う"という夢のようなものを企てた。こけしの力なら可能だ。実際は望まれたものを他の霊との協力によって得るだけのことだから。



 そして、長い時を得て再び復活。また、新たな人間に取り憑いた。その人間は今まで以上に関係を持った存在だった。



◆◆◆



「最近、この町にあった封印の石が異邦人によって壊されたらしいわ」

「そりゃあ、物騒やねー」

「けど、なんにも起きてないんや。長い間封印されて滅んだんやないかな?」


 薪を背負い山道を登っていく。

 薪を住処へと運ぶ途中に聞こえたとある妖怪を封印していた石が外された。海外の者には封印の石ということは気付かれない。彼らは優秀な者なのに妖怪の知識については疎い。

 変わらない自然。さざめく木々に相変わらず何も起こらない土。柔らかな土を踏みしめ行く。その途中に面白き人形を拾った。

「こけし人形か……。いとおかし!!」

 その人形を薪の束に加えて住処へと持って帰った。

 それが間違いだった。身体の中に入っていく霊の魂。


 霊は思い通りに考えを改変して久しいこの世界で謳歌しようと考えていた。が、取り憑いた畔川二太の信念を曲げることなど出来なかった。

 熱血で物事に一途、真面目な畔川は"こけし"に考えを奪われることなく自我を通した。分身することなく何年か経た。

 畔川の仕事は鉱石業。鉄を鉱石を掘る仕事だ。それで稼いでいた。

 ある日、窟の中にいた畔川を潰すように落盤が起きた。その時初めて、畔川の分身が現れた。しかし、二太は動揺する気配を見せない。


<ようやく!分身したか……待ちくたびれた!もっと増やすんだ!!>


 二太の心に話しかける二太も"こけし"に対面する。


「分身するとどうなるんだ?」

 初めて会う怪物。人間を超越した存在。普通だったら恐怖で逃げ出したくなるはずだ。なのに、二太は怯むことなく視線を外さない。

 さらに、分身したという非日常的ことにも動揺しずに何事もなく"こけし"を見つめる。

 ────こいつ、面白い。

<"こけし"のために分身を作って欲しいんだ!!>

「いいよ。だがな、誰かを傷つけるような真似はさせない。」

<そ……そうか、なかなか面白い奴じゃねぇか>

「どういうことだ?」


 今まではいとも簡単に考えを改めれた人間も二太にだけは困難な気がしてきた。

 分身を作ることに協力する代わりに"こけし"に条件を突きつけてきた。こいつは何を考えているのだろうか?



 "こけし"の自由にはさせない────

 二太は約束通り定期的に分身を作った。が、その際に"こけし"のことや分身による現象を調べていた。


<な…なんだこれ?分身しない石!?>


 ある時、仕事場で採れた鉱石は分身することがなかった。二太は分身することのない鉱石を手に入れたのだ。そして、それを確信した。

 さらに、自身の容量の違いに気付き、それを確認するための鉱石を見つけた……というより噂で聞きつけた石を手に入れた。自身の身体で実験して、容量の違いで変化のある鉱石であることを確信した。

 段々と"こけし"の謎が解明されていき丸裸となっていく。


 二太は"こけし"の研究はより深く進んでいく。

 二太の真面目で真っ直ぐな性格が分身を作り出しても争いにはならなかった。分身も皆、一筋に努力する。あの発見をする時までは……


「火によって──死ぬのか」

 実験のために生贄となった分身。彼は黒い滓となっていた。

 今まで二太に争いはなかった。"こけし"を追い詰めていくように段々と謎を解明していった。それは、心も身体も取り憑かれているにも関わらず"こけし"に影響されないかのように過ごしていた。誰も傷ついてはいない。まさに二太の思惑通りだったはずだ。

 とある誤算が思惑全てを撃ち砕く────


 本物は誰だ?

 いや、本物は自分だ!


 それを証明するために──分身を減らして自分一人となる。


<やはり、人間って面白い!!妖怪と比べ物にならない程、退屈しのぎになるよ!!>


 分身した皆はたった一人の分身の反乱によって……争いに巻き込まれていった。戦いの火蓋は開けられて、地元の人々を巻き込んで大炎上を繰り出した。

次回予告


 過去のストーリーは後編へ!


 二太は結局どうなる?

 その次に取り憑いた人間と、その末路とは?


 畔川に伝えられた"こけし"の事実。


次回はあるんじゃないのかな?

  to be continued

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