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~不・老不死でしか行けない場所~

2章、開幕───

戦いに勝つのは太一か?大樹か?

物語は新ステージへ!!

 早速俺の中に潜む悪魔に会いに行こう。聞かなきゃ何も始まらない。


 俺は縄を取り出した。大きな紐が二つ螺旋状に絡み合い太く硬くなる。黄ばんだ色の縄は簡単には破れない。

 縄の先端から少しだけ離れた場所を折り目にして折り返す。そして、その先端を縄の(なか)部へと縛り付けた。固結びで縛るだけじゃ物足りずさらに結んだ。そう簡単には解けない。

 縄の先には輪っかが出来た。今度はその後ろ端を先端として持ち替える。先端を輪っかの中に通すと新たな輪っかが現れた。先端を引っ張ると輪っかの中は縛られていく。引っ張る度合いを調節することで絞める強さを調節できる。

 俺は首に輪っかを引っ掛けた。持ち手部分は地面を這っている。その縄は蛇のように前へと進み始める。それと同時に首は強く縛られていく。


 頭へと血が登っていく。意識は遠のいていき、目の前がぼやけていく。クラクラとする。俺は耐えきれず横倒れとなった。

 段々と現世から遠ざかっていく。何処か途方もない場所へと落ちていく感じがする。終わりのない空間。まさに、宇宙のように先の見えない場所を漂い続けるように……


 意識が復活する頃には俺は謎の空間にいた。

 俺が分身を作る時に度々訪れたことのある場所だ。


 周りには何も無い。宇宙のような無の空間に漂っている。そして、俺の他に唯一悪魔が目の前に存在している。いや、実際は悪魔ではなくて妖怪か……


<よく来たね!ここは"生"の世界と"死"の世界の狭間に在する世界の一エリア。まさかわざわざ来るなんて、嬉しいよ!!さあ、何の用でここに来たんだい?>


 悪魔は相変わらず不気味に微笑んでいる。


「ああ、ここに来たのには理由がある。俺は隆志の身元を知りたいのだが、何か知ってるのか?」

 すぐに本題へと入った。長い時間この場所にいられるとは限らないから、早めに話をつけたかった。

<知ってるよ!畔川二太の子孫だよね?彼なら愛知県の新城(しんしろ)に身を構えているよ。住所は確か……>

 畔川────?

 悪魔はそう言った。最初に"畔川"で思い浮かんだのは畔川大樹の名前だった。やはり、隆志のあの封筒は俺を出し抜くための罠だったのか……

「待ってくれ!多分、そいつは俺を殺すために誘い込もうとしていただけだったんだ。彼のフルネームが聴けて良かった。」

 まさか、大樹と関わりがある人物だったなんて。多分、親子かなんかだろう。出会う前に気付いて助かった。危なかった……


<そうかな?隆志の息子は危険だけど、隆志自身は安心じゃない?君を目標数まで分身させてくれそうな感じだったんだけどな>


 息子というのは大樹のことだろう。悪魔の言う通り大樹は危険だ。だが、隆志は違うのか?


<隆志と会うべきだよ!大樹と戦う意志があるなら尚更だね。>

「そうか、彼は有益な情報をくれる人物でもあるのか。」

<隆志の息子は君の大事なものを奪おうとしているよ。>

「大事なもの────?」

 大樹は俺の大事なものを奪おうとしている?どういうことだ?そもそも俺の大事なものとは何なのか?


<君が"自分(こけし)"を吸収した時に大切だと感じていた……確か…葉月來愛だっけ?を殺そうとしているんだよ。隆志の息子はどんな手を使ってでも君を誘い殺そうとしている。まあ葉月?の方は自身の手を汚さずにね。>


 俺は驚きを隠せない。

 葉月が殺される?それも俺のせいで……。もしかして、テレビで宣戦布告していた"大切なものを奪う"、その大切なものは俺の彼女!!?

 自身の手を汚さないということは、部下や何かに命令して動かし葉月を殺すとか葉月の死因を自然死や原因不明の死として大樹自身は罪を背負わない。

 まさに手段を厭わない考えだ。


「早く葉月を助けなきゃ────」


 頭の中が葉月のことでいっぱいになった。

<焦ったら死ぬよ?まずは手堅く隆志と会わないと何もかもを失って結局大切なものも失うよ?>


 焦っている俺を一瞬にして冷静にさせた。そうだ。悪魔のいうことに一理ある。

 まずは、隆志と会おう……

「話を遮ってごめん。隆志の住所は何?」

 悪魔から隆志の居場所を聞き出した。これで、隆志と会える。俺はそれに賭ける────


「それと、何でお前は彼らのことについて知っているんだ?」


 さっきから何故そんなにも彼らのことに詳しいのか?そもそも、彼らもこの世界へと行けるのか?

<畔川二太は君と同じ"こけし"に取り憑かれ一人だよ。その子孫は"こけし"のことに詳しくて敵に回すと身の危険があるからね。ずっと同行をマークしているのさ!まあ、彼らはそんなこと気付いてないけどね>

「なるほど、だから彼らのことを知っているのか。」


 悪魔が彼らの情報を知っているだけで、彼ら自身ここへと来れる訳ではないことは分かった。

 悪魔は有益な情報を持っている。そんな悪魔が認める隆志はもっと有益な情報を持っているに違いない。



「ありがとう!助かった────。どうすれば、元の世界へと戻れるんだ?」


 そういや、どうやって戻るんだ?ここへ来たのはいいけど戻り方は書かれてなかったな。悪魔に聴けということで書いてたのか?

 悪魔は独特な笑い方をして俺を嘲笑った。


<すぐに戻れるさ!君にはもっと分身して欲しいけど、全然してくれないよね?目標数までまだまだだよ!!君のことをあまり好かないけど、折角作った分身を消されるのはそれ以上に嫌だからこけしは喜んで協力するよ!また来てよ!!いつでも協力してあげるからさ!!!>


 悪魔の微笑みが不気味に変化していく。ぼやけていくのか悪魔は広くなるように伸びていった。さらに、不気味に嘲笑っているように見える。いつしか、大きくなっていく悪魔が俺を飲み込んだ。

 いつしか俺は透き通る海の底へとやって来ていた。太陽の眼差しが海へと射し込み鮮やかなエメラルド色に輝いていた。その海を自由に泳ぎ回る人魚の姿が目に止まる。それは、俺のような人間と妖怪のハーフ……

 ここは人間と死後の世界との狭間。妖怪の暮らす世界。人間は立ち入ることのできない場所。

 俺はもう妖怪か……。目の前を優雅に踊る人魚のように俺は人間と非人間のハーフなんだ。もう普通の人間ではない。そんなことを痛感する。

 海の中で漂う俺は表面へ向かって浮上していく。浮上するに連れて息が苦しくなる。大量の泡が口から溢れ出し身体の浮上よりも速く水面下へと上昇していく。いつしか、俺は海を出た。


 目の前は真っ暗闇だ。瞼を開けるのが重い。

 身体は揺さぶられているのが分かる。俺は壁を背に足を伸ばしている。両肩を誰かの手が触れている。


 勇気を奮って瞼を開いた。そこには、必死に揺さぶる冬秀と、心配そうに見守る裕翔達の姿が見えた。


「すまん、今起きたわ!!」

 そう言って何事もなく立ち上がった。

 安堵したのか脱力して地面に倒れる仲間達。


「良かった……。やっぱり死なない身体だったんだな。だが、どうして首吊り自殺みたいな行為をしたんだ?」

 冬秀はほっと胸を下ろしていた。それを見ると本当に申し訳ないと感じる。

「俺の中に潜む悪魔に会ってきた。とりま、不老不死でしか行けない場所だ。」

「何のために行ったんだ?」

「隆志の住処を聞きにな……」

「何っ!!そんなんで分かったのか?」

 冬秀はびっくりして立ち上がった。あまりにも忙しくて吹き出しそうになった。

「聞いてくれ……。隆志の正体と居場所を聞き出せた。」


 冬秀はあっけらかんとしていた。そして、早くその正体と居場所を教えてくれという表情をしている。まあ、そんなに急ぐなよとは思ってしまう。早かれ遅かれ伝えるのだから。



  「「隆志の名前は畔川隆志。畔川大樹の父親だ!!」」



 大樹が息子なら親なのだろう。そして、隆志という名前からして母な訳ないから父で合っているだろう。

 大樹は俺らを殺そうとした非常に危険な人物である。

「それって、ヤバイ奴じゃねぇか?良かったじゃねぇか、会う前に気付いて……」

「いや、俺は隆志に会いに行く────」


 冬秀は衝撃から手に持っていた……いや、何も持っていなかったから落とすものなんてなかった。

「悪魔曰く、大樹の方はヤバイが隆志の方は安心だということだ。それでもリスキーなんだけど、得られるものは大きいと思う。行かなければ、大樹に殺られてしまいそうだしね」

「お前は本当に会うのか?」

「勿論。例え、反対されても俺は行く。」

「やはり、意志は変わらないか。覚えてるか?俺の言ったこと!」

「死ぬなよ!と、もしもの時は頼れってことだろ?」

「そうだ……」


 俺は悪魔に教えて貰った住所に向けて手紙を書いた。待ち合わせにする場所はここを特定されにくい場所で人の視野が少ない所。

 一人、俺がどんなに悪い奴だとしても信頼出来る仲間がいる。彼ならきっと……俺を少しの間匿うことが出来る。


 俺はその一人と手紙で連絡を取り、信用と約束の日を確認、決定してから隆志に向けて手紙を送った。

次回予告


 ついに、隆志と会う──


 隆志は敵か味方か……

 太一の選択肢は良い方向か悪い方向かどちらに傾くのか?そして、太一を匿う一人の正体とは?


 次回はあるのか?

to be continued

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