マ・ジですか?マトリョーシカ人間になった俺
とりま、狂ったストーリーです。
・24歳→22歳 、 他1部 訂正しました。
マトリョーシカを知っているだろうか?
ロシアの民芸品の人形だ。その人形の中にまた人形が入っている。さらにその人形の中に人形が入っていて、その繰り返し。基本的にはこの何重程度の多重入れ子構造となっている。
何故急にマトリョーシカの話をしたかって?
それは俺が《マトリョーシカ人間》だからだ。
何を持ってマトリョーシカ人間なのかは気になるだろうが、これには非現実的な有り得ない減少が幾つも重なっているから一気に説明したら頭の中がぐちゃぐちゃになる。
俺は良くいる普通の大学生だった。
【呪いの本】を手にするまでは──────
佐藤太一、22歳。普通に学校行って普通にバイトして普通に彼女とデートして、普通に暮らしていた。のに、あの本を手にしたのを機に俺は、俺の人生は狂い始める。
お前らに問いたい。
死ぬと同時に何故か分身して自分が二人になる代わりに、《不死身》になれるのならお前は嬉しいか?
俺は全く嬉しくない。お前らが嬉しいと感じるならこの呪いをお前らに移し変えたいぐらいだ。
これは人間として死亡するまでの物語だ。
◆◆◆
明日は葉月とデートだ────
昼からだから寝坊にはならないが早く寝ようと考えた。俺はテレビのリモコンを手に取る。
テレビの中で血湧き肉躍るゾンビが意気揚々に人を襲う。そんなゾンビがテレビ内の一人の人間を襲う所でテレビが真っ黒になった。俺がテレビを消したのだ。
俺はそのまま就眠した。
夜が明けて朝が来た。
俺はその日の朝支度を終わらせる。心が踊っているのが分かる。そんなに早く支度を終わらせなくてもデートは昼からだから良かった。けれど、心が踊っていたんだから仕方ないだろう。
どうせ暇だし散歩でもしようか──
ポカポカの天気に打たれながら陽気に歩く。浮かれすぎてるが、仕方ないだろ?デートが昼からなんだから。
俺は心の中でスキップをしながら、普通に手を振って歩いている。
出掛ける頻度は高い方ではないが地元は知りつくしていると俺は高を括っている。そんな俺でも踏み込んだことのない場所があった。正確には踏み込んでも何にもないことが分かっていたからだ。
まあ、何にもないけど行ってみるか……
その見ず知らずの何にもない場所に行く。そこは深く茂た山で、誰もそこに寄り付かないのか草木は刈り取られず一躍に伸び続けている。乱雑に伸びる蔓が至る所に伸び続けている。
俺は人工の石階段を登る。その階段ももう旧く使われていないようで自然に侵されている。
あれ?あんな道あったっけ────!?
山奥まで造られた石階段の途中の脇道に俺も知らない道がある。
折角来たし行ってみよう。俺は道を変え未知なる道を進んだ。その先には俺も知らない小屋が立ち聳える。
高く伸びた木々が日差しを遮り薄暗くしている。乱雑にある自然の植物が至る所にあるせいで不気味さを作り出す。そして、放置された黒褐色の小屋は痛んだ具合がまさに恐怖を感じさせる。
進んでみよう……
「お邪魔しまぁす」
小屋の中は何もない。壊れた木の破片や放置されて自然に還った家具などが目に映る。その中に一つだけ気になるモノが目に入る。
俺はそのモノを手に取った。
「何だ?この本────────」
俺は後に【呪いの本】と名付けるそれは、古びてボロボロになり黒く変色し、濡れているのか萎れている。俺はその本を適当に開いた。
やめておけば良かったのに……
フォンッ────ッ。
真っ黒の物体が本の中から身を乗り出し俺の身体に乗り憑く。その本は黒い物体が消えると同時に消失した。
俺は悟った……
これは【呪いの本】だったのだと───────
◆◆◆
あれから何も起きていない。
まだ昼にもなってないからだろうか?俺は不安で堪らなかった。これからデートなのに俺は不吉な予兆を目にしたのだ。
不安で不安で仕方ない。
デート開始、それまで何も変哲なことは起きていない。このままデートを無事終えられればいいな。後、葉月が一気に好意を最大になってくれると尚更だ。
不幸はいつしかやってくる……
葉月からのプレゼント。俺は浮かれたし凄く喜んだ。それを見て葉月も俺以上に喜んだ。
俺は浮かれすぎていた。葉月にも同じことが言えたのかも知れない。いや、俺以上に浮かれすぎていたのかもな。
赤信号なのに横断歩道を渡る葉月
勢い良く突っ込むトラックに気付いても、気付いた頃には遅い。トラックは止まれないし、葉月自身回避出来ない。
このままじゃ葉月は死ぬ───────
俺の身体は脳とは別に動く。まさに無意識で俺は葉月を勢い良く投げてトラックの衝突の脅威を排除した。ただし、葉月だけ
今度は俺に衝突する………
そこら中に鮮血が舞ったのかも知れない。哀しく泣きじゃくる葉月の姿が思い浮かぶ。
『嗚呼、俺は死んだんだ────』
呪いだ。多分、これは呪いの仕業だろう。俺がもし朝にあの【呪いの本】を手に取らなかったらこんなことにはならなかっただろうに。悔やんでも悔やみきれない。
真っ黒闇の宇宙の中で俺は漂っている。周りには何もないし色もない。まさに、真っ黒。
痛みはない。段々と意識が遠のく。感覚はそれだけだ。
ウッ ─── ─。
今不思議と襲う痛み。
お腹を境に上半身と下半身をギロチンで斬られたかのような痛み。
生きてるが俺は上半身だけ取り残され、下半身は無の境地に漂っている。
分かれた断面から何かが出ていく……
何だ?この痛みは……
何とも言えない衝撃が俺を襲う。これが《死》か?
呪いの霊魂が俺の身体から飛び出し下半身と接触する。次の瞬間、俺の上半身と下半身が一致して完全に身体が整った。
俺は沈んでいるのか?上がっているのか?
目の前が明るいぞ!?
「太一君───」
そう嘆きながら涙が俺の身体に落ち零れる。冷たいな……
身体が重……くない!!
俺はいい気になって立ち上がった。「危なかった」と言って!
葉月は死神を見たかのように驚く?まあ、死んだと思った人間が生きているとなれば驚くのも当然だ。
「驚かなくていいよ。奇跡的に助かったんだ……」
「まあそれもだけど、違うの……」
目を丸くしながら葉月は俺を見る。そういや、無傷ということが驚いたということか?
「どういうこと?何で太一君が二人もいるの?」
はぁ────────?
俺が二人?そんなんいる訳ないじゃん……。俺は俺で二つに増えるとか。ドッペルゲンガーがいる訳でもあるまいし……
「分からない。俺も困惑してる」
俺の声なのに俺の声じゃない。俺の体なはずなのに俺の体じゃない。目の前には俺と瓜二つの……《俺》がいる。
そう呪いは俺を殺したのではなく俺を救ったのだ。ただし、分身を生み出す代わりに────
頭の中がぐっちゃぐちゃだ。意味が分からない。この【呪いの本】を手にした俺はもう普通の人間として生きることが出来なくなったのか?
「何が起きてるんだ────────?」
◆◆◆
マトリョーシカ人間を知っているだろうか?
日本在住の22歳佐藤太一のことだ。その人間の中にまた全く同じ人間が入っている。さらにその人間の中にも全く同じ人間が入っていて、その繰り返し。実質この無限の無限入れ子構造となっている。
中を取り出すことは出来ず、その入れ子が死ねばその中の人間が現れ、死んだ本体は蘇る。
不死身の身体を持つ俺特有の能力だ。
お前らは知るだろう……
分身がいることの恐ろしさを───────
分身がいることの恐怖、分身が増え続けることの恐怖……
狂った人生の初手
それは家庭や身近なものから崩れ始めること。
俺 対 俺 対 俺……の俺なりの頭脳戦バトルが開幕される?
次回はある、to be continued