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ちゅうに探偵 赤名メイ  作者: 神有月ニヤ
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《ちゅうに探偵 赤名メイ⑦》


次の日、妙に早起きできた俺は、早速、水本(みずもと) 麒一郎(きいちろう)の尾行をすべく準備をした。外は朝焼けが綺麗だった。内容の濃かった昨日のせいか、俺はあの後風呂に入ってすぐに寝てしまい、腹が異常に空いていた。


行きにコンビニで何か買おう。


俺は青いスーツに着替え、コンビニ経由で水本の屋敷の前へと急いだ。

通常のサラリーマンでもまだ起床したぐらいの時間に、俺は屋敷の前に着いた。辺りは静まり返り、鳥のさえずりがよく聞こえた。空気も澄み切り、この環境で何故かラジオ体操でもしたい気分になっていた。俺は行き掛けに買ったアンパンと牛乳を持ちながら、刻一刻と、水本が姿を現わすのを待っていた。


まだ朝晩は冷えるなぁ・・・。


が、身震いする程ではない。このまま水本が姿を現わすまで待ちというのも、なかなかに忍耐がいる仕事なのだと、痛感した。ふと屋敷に目をやると、電気は点いていた。お付きのメイド達や執事が朝の支度をしているのだろう。


あの人も大変な所で仕事してるな・・・。


と昨日出会ったばかりのメイド長の事を思い出した。もっと若いメイドの人達もいるであろうから、指揮や育成は彼女だろう。だが、それ以上に執事の方と同じ程、奥さんから絶大な信頼がある。やりがいもあるのだろう。うんうん、と頷いていると、今の今考えていたその本人が、屋敷の正門前から出てきた。俺は思わず身を隠した。


あ、あれ?あの人には調査の事は言ってあるのに何で隠れなきゃならないんだ・・・?


悪い事をしていないのに警察がいたら思わず目をそらしてしまうような行動を取ってしまった俺は、側から見たら変な人だろう。そーっと電柱の陰から顔を覗かせると、メイド長は既に後ろ姿になっており、続いて執事が大量のゴミを持ってやって来た。見る限り袋が一般家庭の7、8倍はある。彼はそれを台車に乗せてどこかへ行ってしまった。


毎朝こうなのか・・・?


ゴミの多さに圧倒されながらも、いつ現れてもおかしくはない時間になっている事に気が付いた。注意していると、遠くの方から車の音が聞こえた。今度こそ本当に身を隠す場面に遭遇した俺は電柱の陰へ。案の定水本を送るために用意された車で、奴は姿を現した。


念の為念の為・・・。


俺は関係無いだろうが、フラッシュを焚かないように気を付けながら写真を撮っていった。昨夜のような緩んだ頬は無く、眠そうだが、そこには日ノ本商会の会長、水本 麒一郎の姿があった。


今日はグレーのスーツか・・・。


一枚、また一枚と静かなシャッター音は水本を捉えた。


よく考えれば、朝一から浮気の現場なんてあるわけねぇよな・・・。


本命は夜だということに気が付いた俺は、水本を乗せた車が発進したのを見送ると先程撮った写真を確認した。やはりそんなそぶりは全くない。むしろある方がおかしい状況に写真を消そうかと思い消去ボタンに手を掛けたが、自然と指は止まった。


あれ、何だコレ?


そこに写っていたのは、主人が出社するのにも関わらず頭を下げて見送らない執事と、頭を下げているが主人の方とは違う方に視線を落としているメイド長。俺は違和感を抱きながら、アンパンと牛乳を平らげ、今度はブラックサンダーこと黒柳と合流すべく、赤名探偵事務所へと向かったが、俺の尾行生活の1週間は、初日に撮れた違和感のある写真以外に収穫はなく、あっという間に過ぎて行ってしまった。

そして1週間後、報告をしようと探偵事務所へと向かおうとした朝。赤名探偵からの電話で起こされた。


「・・・もしもし、おはようございます・・・」


『月は眠り、太陽が起きた言うのに、貴様は一体何をしておる?』


「へ・・・?何ですかこんな朝早くに・・・?」


『今日は調査報告の日だ。支度してさっさと来い』


「・・・ふぁい・・・」


『後、朝早くではない。貴様の家には時計すらないのか?』


え・・・?


赤名探偵と会話している内に脳が起きて来ていた。俺は時計に恐る恐る目をやると、時刻は、


「10時半・・・」


血の気がサァーっと引いた。急いで支度をし、探偵事務所へと向かおうとするが、これから更に血の引くような事件が起きるなんて、俺は知る由もなかった。


《ちゅうに探偵 赤名メイ⑧》へ続く。

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