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ちゅうに探偵 赤名メイ  作者: 神有月ニヤ
48/53

⑱′′

《ちゅうに探偵 赤名メイ⑱′′》


声の主である宮城(みやぎ) 久松(ひさまつ)はゆっくりと俺たちに近付いた。顎に指を這わし、ふむ、と一言呟くと、目線は赤川に向いた。


「私は『殺せ』と命じたはずですが?」


静かだが、どこにも隙はない。まるで弱火でじっくり煮詰められたような威圧感は、さまざまな場数を踏んでいないと出せないだろう。


・・・さっきの会話は、聞かれたのか・・・?


俺は焦りと同時に冷や汗をかいた。もし聞かれていれば、確実に俺と赤川の命はない。


「・・・申し訳ありません、利用価値があると思い、生かしました」


赤川は咄嗟に嘘を付いた。この嘘は、俺たちの会話を聞かれていたら通用しない。赤川は賭けに出た。聞かれていない方に。


「ほう・・・」


宮城は少し黙り、考え始めた。


どうだ、聞かれてたのか?そうじゃないのか・・・!?


緊迫した室内は、時が止まったように張り詰めた。そして宮城は口を開いた。


「・・・良かろう」


くるりと向きを変え、宮城は入ってきた扉へと向かい、こちらに一瞥(いちべつ)した。来い、ということだろうか。


上等じゃねぇか・・・。


ここから逃げる事も重要だが、こいつが主犯である確固たる証拠が必要だ。何としてもそいつを入手して赤川を連れて脱出する。それが俺がやるべき事だろう。


てことは、コレが活躍する、か?


俺はポケットに入れていたボールペン型のボイスレコーダーの頭にあるポッチを一度押した。小さくカチッと鳴った。


「おっと、そうだ・・・」


宮城は何か思い出したように振り向いた。


「これで後ろ手に縛りなさい。それと、これも持っていなさい」


宮城が赤川に渡したのはロープだった。もう一つ渡されていたが、影に隠れて見えなかった。麻縄で作られたそれは、頑丈かつ柔らかい。彼女は怪しまれないよう、俺の手を後ろに回してキツく縛った。ギチチ、と縄通しが擦れて聞こえる音が、より一層固く結ばれたのを強調していた。


「場所を変えましょう。付いてきなさい」


宮城は部屋を後にする。俺は結ばれた後ろの手から伸びる縄を赤川に持たれ、まるで奴隷(どれい)のように一定の距離を保ちながら後を付いて行った。

何階分の階段を上ったかは、正直分からない。窓やドアおろか、他の階が無いので情報がない。地上までの道のりが遠く感じた。


一体いつまであんだよ、この階段・・・!


俺は苛立ちながらも息を切らした。後ろにいる赤川も、軽く息が上がっていたが、数段前を行く宮城は、何食わぬ顔で階段を上がって行っている辺り、普段からここを使っているのか、歳の割に体力があり過ぎるのか、どちらかだろう。


「あなたは、前に一度お会いしていますよね?」


宮城はおもむろに口を開いた。


「・・・だったら何なんだよ」


俺は少し呼吸を乱しながら強めに答えた。


「そんなに敵意を剥き出しにしないでくださいよ。私は世間話を愉しみたいと思っておりますので」


何が世間話だ。こちとら殺される計画聞かされてんだぞ。


「あの時は嬉しかったですねぇ。信者が増えるのは、私の家族が増えるそのものですから」


・・・何言ってんだ、こいつ?


宮城は何食わぬ顔で階段を上る。そんな家族を平気で殺しの道具に使ったり、犯罪に手を染めさせている奴を、俺は心から軽蔑していた。いや、軽蔑以上の感情を、奴に抱いていた。そんな中、階段をゆっくり上がる宮城の足がようやく止まった。


何だ、着いたのか・・・?


「お待たせしました。地上です」


と、宮城が重っくるしい扉を開ける。俺は久しぶりに感じる太陽光に目を瞑ろうと瞼に力を入れた。が、俺の期待は裏切られた。


「え・・・夜・・・?」


俺は一体何時間眠らされてたのか、と考えさせる余裕も与えられずに次の情報が目に入ってきた。


「車・・・?」


目の前には黒のセダン系の車が置いてあった。これからどこかに移動するのか?と考えようとした瞬間だった。


「あ゛っ!!!???」


後ろからの電撃。それがスタンガンだということはすぐに分かった。そして、誰がやったのかも。


くそっ・・・またやられた・・・!!


俺は再び赤川を眼球だけを動かして睨みつけたが、彼女は泣いていた。薄れ行く意識の中、俺の脳裏にはその顔がこびりついていった。


《ちゅうに探偵 赤名メイ⑲′′》へ続く。

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