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ちゅうに探偵 赤名メイ  作者: 神有月ニヤ
45/53

⑮′′

《ちゅうに探偵 赤名メイ⑮′′》


俺が目を覚ましたのは、コンクリートの壁が周りを囲う部屋だった。扉があるが窓はない。その他には棚がいくつかあり、そこには古めかしいファイルが所狭しと並んでいた。


「・・・スマホ・・・!」


俺はひとまず誰かに知らせないと、と左ポケットに手をやる。しかしそこには何も入ってはいなかった。


そりゃそうか・・・。くそっ・・・。


俺は昨夜の事を頭の中で整理した。


バーNEOに行き、赤川が来て、俺がトイレに行き、ボイスレコーダーを起動して、戻ってきてカクテルを一口飲んだら猛烈な睡魔に襲われて、気付いたらここ、か・・・。


俺は思い出しながらも胸ポケットに入れておいたボイスレコーダーを確認した。幸い、俺をここに連れてきた連中にはこれがボイスレコーダーだとは認識されず、そのまま入っていた。そして誰も近くにいない事を確認して再生ボタンを押した。


『ジョロロロロロ・・・・・・』


やっべ、俺のしょんべんから始まるのかよ・・・。


俺は恥ずかしくなりながらも聞くのを続けた。そこから水を流す音、手を洗う音、ドアが閉まる音が聞こえ、店内BGMがほのかに聞こえた。会話が始まった。


『おかえり』


『ん〜。そういえば、俺に話したいことがあったんじゃないのか?』


『・・・ここ2、3日の事だと思うんだけど・・・。誰かに後を尾けられてると思うのよ。私が家を出た時から、家に帰るまで・・・。これって、ストーカー・・・なのかな・・・?』


『・・・気にしすぎじゃないのか?」


『そうなのかなぁ〜・・・』


『お前・・・な、にを・・・』


嫌な会話だった。自分が気を失う最後の言葉が、信じていた幼馴染を疑う言葉だったからだ。俺は集中して、気を失った後の次の会話を一言一句聞き漏らしのないようにした。


『これで良かったんですか?』


『・・・青山・・・。ごめんね』


声質からしてマスターの声と赤川の声だったが、俺はハッとし、一旦ボイスレコーダーの再生を止めてしまった。


ごめんね・・・だと・・・?


その言葉がやけに引っかかった。だがこれで確信を持てた。赤川は俺に知られたくない事をしている、と。それと同時に胸が締め付けられる感覚が襲ってきた。高校卒業と同時に離れ離れにはなってしまったが、割と身近に感じていた相手が、何の相談もなく手の届かない場所に行ってしまいそうな事に、やるせない気持ちが募っていった。


「こんな事になる前に一言あっても良かったじゃねぇかよ・・・」


俺は拳をコンクリートの地面に突き立てた。赤川の両親が事故で亡くなったと聞かされた時と同じ気持ちが蘇っていた。何で俺は知らなかったんだ、何で一言も言ってくれなかったんだ。


俺たち幼馴染だろ・・・!?


言葉だけを見れば、とても深い仲だと思われるだろう。が、実際は高校までずっと一緒で、社会人になってからは疎遠になりつつあったが、『それ』を先日の飲みの席で再確認したはずだった。


・・・仕方ない、のか・・・。


こうなってしまっては仕方のないことだと割り切らなければ、心に負担は少ない。考えていてもしょうがない。俺はその事を考えるのを辞めるべく、あからさまに頭を振った。そんな事で出て行くはずのない気持ちを頭から追い出そうと、子供のように振った。少しは気が晴れると思ったからだ。


「切り替えろ・・・!」


頭では分かってはいるが、心が付いて来ていない。とりあえず、俺がまずやるべき事を考えた。


・・・まずはこの場所が何なのかっていう事だ。


俺は立ち上がり、少し歩きながら考えていた。恐らく、どこかの倉庫ではないだろう。倉庫にしては物が置いてない。そして窓がない。どこかの地下である可能性が高く、俺の予想が正しければ・・・。


「ここは【双響(そうきょう)渓谷(けいこく)】の建物の中っぽいな・・・」


それを裏付けるのは、大量に貯蔵されているファイルの中身だった。過去何年にものぼる収支の記録、メンバーの履歴書、活動報告書、などなど。ホコリがかぶっている物もある事から、恐らくかなり昔からの物だろう。メンバーの履歴書に至っては、既に在籍していない人達の可能性が高い。おもむろにパラパラと履歴書をめくっていると、俺はとある名前で手が止まった。


「ん・・・これって・・・」


見付けたのは『あ行』の欄にあった、赤川(あかがわ) 史郎(しろう)赤川(あかがわ) 彩子(あやこ)の名前だった。


確かこの名前は、赤川んとこのおじさん達の名前だ・・・。


顔写真を見る限り、俺が見知っている顔だった。間違いない。昔、よく遊んでくれたおじさんとおばさんだ。まさか【双響の渓谷】のメンバーだったなんて知らなかった。俺は2人の履歴書に目を通した。備考の欄にはこう書かれていた。


「『両名とも事故で他界。惜しい人材だったが仕方なかった』・・・?」


仕方なかった、って・・・、まさか!!


俺が声を上げようとした瞬間、扉の向こう側に人の気配を感じ、慌てて元いた場所に同じように寝転がった。程なく扉が開き、俺と同じように、何者かが床に寝転がされた。ドサッと乱暴に降ろされた人物は、降ろされた衝撃で『うっ』と軽く声を上げた。女性だと分かった。扉が閉まり、鍵を掛けられ、足音が遠のいた事を確認し、ゆっくりと寝返りを打って運び込まれた人をチラッと見た。俺は驚いた。


「あ、赤川・・・!?」


俺の声に反応し、彼女はゆっくりと目を覚ました。


「・・・青山・・・」


《ちゅうに探偵 赤名メイ⑯′′》へ続く。

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