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ちゅうに探偵 赤名メイ  作者: 神有月ニヤ
37/53

⑦′′

《ちゅうに探偵 赤名メイ⑦′′》


「おはようございます!!」


俺はいつも以上に気合いが入った挨拶で探偵事務所に入って行った。その声に驚いたのか、ピンクガーデンこと桃園は目を丸くしていた。


「なんだ、お前休みを取っていたんじゃないのか?」


赤名探偵は湯飲みに注がれた温かめの緑茶を(すす)り、特に驚いた様子もなく書類に目を通していた。


「ブラックサンダー、昨日のアレ、詳しく聞かせてください!」


彼のデスクに詰め寄る。するとブラックサンダーこと黒柳も特に驚いた様子もなく、例の赤川が写った写真をクリップで留めた資料を纏めていた。


「これは俺の仕事だ。お前さんは関係ない」


え、何だ、この冷たい感じ?


昨日あれだけ情報を漏らしといて、いざ自分から行くと突き放された事に、俺は疑問と同時に怒りすら覚えた。


「何でですか!俺にも協力させてください!」


俺はデスクをバンっと叩いた。その様子にピンクガーデンこと桃園と、その場にいたジャスティスこと白井は驚いていた。が、ブラックサンダーこと黒柳と赤名探偵は落ち着いていた。俺がいる事に無関心のようにも見えた。


「お前さんの知り合いなんだろ?なら尚更、手伝わせるわけにはいかない」


ブラックサンダーこと黒柳はそう言うと、纏めた書類を脇に挟んで出て行ってしまった。呆気にとられる俺に、赤名探偵は静かに口を開いた。


「今回、ブラックサンダーが受けている仕事は結構デリケートなんだ。調査がバレて組織ごと雲隠れされては解決できないからな。そこで、尾行と変装が得意なブラックサンダーに直接依頼が来たんだ。・・・知り合いともなれば、私情が絡む。残念だが、今回探偵事務所からはお前の参加は認められないわけだ。分かったらさっさと休みを満喫してこい」


半ば強引に俺を押し出し、バタンと勢い良く扉を閉められた。


何なんだよ一体・・・!?


訳も分からないまま探偵事務所を追い出された。私情が絡むという理由は理解できるが納得はできなかった。そのまま掘っ建て小屋の探偵事務所の壁に背中を預ける。ギシッと音がし、今にも崩れそうだった。


「はぁ〜・・・。歯がゆい・・・」


赤川は何か隠していそうだ。それを幼馴染の自分が明らかにできないのはもどかしく、やり切れない。良い方向に転ぼうが、そうじゃなくても、真実を知りたい。本当に悪事に手を染めているのかどうか。それとも、昔のままなのか・・・。


「・・・うだうだしててもしょうがない・・・。一先ずどうしようか」


と背中が壁から離れたところで思い出した。


そういえば・・・、昨日ブラックサンダー、こんな事言ってたな。


『藤堂警部から調査依頼が来ていてな・・・。』


「そうだ、藤堂警部!」


そこそこ大きな声を出してしまい、慌てて口を覆う。個人で調査しようとしていることを知られたくない。何とかこの休みを利用して出来る限りの事をやろうと、意気込む。ブラックサンダーこと黒柳を尾行するのも悪くはないが、俺の初仕事の時の様に上手くはいかないだろう。何しろ相手は探偵歴の長い人物だ。いや、俺に尾行される事は承知の上で動き、撒くことすら容易なはずだ。


俺は俺で動くしかないのか。


軽く溜め息を吐き、覚悟を決める。これから自分は、知りたくない事実を知りに行く。恐らく、あの時ブラックサンダーこと黒柳から聞かされなければすぐに知る事はなかった。全てが終わった後に誰かから聞かされていていたら、後悔するであろう。だから、せめて自分でその(みち)を行くしかないのだ。


よし・・・藤堂警部はまだこの前の怪我で入院してたはずだ。


俺は、連続通り魔事件の時に負傷し、藤堂警部がそのまま入院した大きな病院へと急いだ。


《ちゅうに探偵 赤名メイ⑧′′》へ続く。

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