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ちゅうに探偵 赤名メイ  作者: 神有月ニヤ
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《ちゅうに探偵 赤名メイ⑪》


さて・・・、この事件が内部犯である証拠集めか・・・。


俺は廊下を歩きながら、そんな事を考えていた。正直、その証拠は集まってほしくなかった。この屋敷にいる人たちは、良い人ばかり。とても事件を起こそうとする過激な人はいなさそうだったからだ。


とりあえず屋敷内を回ってみるか・・・。


依頼人を殺した犯人を仕事として明かすというより、ただただ、せめて外部犯であってほしいという願いを込めて捜査を俺なりに始めようとしていた。大広間の扉を開けると、藤堂警部の指揮のもと、屋敷の人たちの事情聴取が行われていた。


「お?お前さんは確か赤名のところの・・・」


「はい、新人の青山 凌と申します」


「大変だな〜、新人で殺しに居合わせるなんて」


「ははは・・・いやー、参りましたよ」


渇いた笑いだったが、今の自分に『心の余裕』を取り戻すには十分だった。

この部屋の隣で事情聴取が行われているようで、1人出てきたと思ったら入れ替わりで1人入って行った。メイド、庭師、運転手。合わせて15名程の屋敷の人たちの事情聴取の内容は大体想像できる。恐らく、事件発生どこにいて何をしていたか、被害者に恨みを持った人物に心当たりはないか、と、これぐらいだろう。

俺もその様子を藤堂警部と眺めていると、鑑識の1人が藤堂警部をチョイチョイ、と呼んでいた。それに気付いた彼は、もたれていた壁からヨイショ、と姿勢を正して呼ばれた方へ行こうとした。


「鑑識の連中に怒られない程度には捜査して良いからな〜」


と去り際に言葉を残していくと、事情聴取している部屋とは違う部屋へ入っていった。そこは俺らが事件の事を伝え回っているときにメイド長が両手持ちの銀トレーを持って出てきた、恐らく厨房。


警察が事情聴取してるならここに居ても意味ないか・・・。


俺も探索の続きを、と、2階を目指した。

窓から望む景色は、見晴らしが良かった。屋敷の外を見て回れるように設計されているのか、外向きの窓を見ながら一周グルっと回れる。


「奥様を殺して屋敷の外へ逃げるのは難しそうだな・・・」


やはり内部犯なのか・・・?でも一体誰が・・・。


そんな事を思って壁にもたれながら外を眺めていた。おもむろにスーツのポケットに手を突っ込むと、クシャッとした感触が。取り出すと、1枚の写真だった。


1週間前に屋敷の前で撮った写真か・・・。


主人が出社するというのに頭を下げない執事と、頭は下げているが目線は違う方を向いているメイド長。結局誰にも見せる事が無かった1枚だ。ぼんやり眺めていると、向こうから誰か近付いてきたのが気配で感じ取れた。


「こんなところにいたのか、ブルーマウンテン」


「白井さ・・・ジャスティス」


「まだ呼び慣れないかい?」


ジャスティスこと白井は、そう言うと俺と並ぶように壁にもたれかかった。


「ん?手に持ってるのは?」


俺は例の写真をジャスティスこと白井に渡した。隅々まで凝視する彼の目は真剣そのものだった。そして一通り目を通すと、一言呟いた。


「ちょっと、これ借りて良いかい?」


「え?良いですけど、どうしたんですか?」


「いやなに、重要な証拠かもしれないだろ?」


何言ってるんだ、この人は?


自分が何気なく撮った一枚にそんな物が写ってるなんて、いくら見直してもなかったはずだ。


「よし、ちょいと行ってくるね〜」


と、ジャスティスこと白井は優雅に階段を降りていってしまった。俺は溜め息を吐き、再び1人になってしまった時間で考えを巡らせようと、壁にもたれかかったが、階下から聞こえた声によって、興味はそちらに向いた。


『貴様ら何者だ、ここで何をしておる!!』


何事だ、と階段を降りていった光景に、俺は息を飲んだ。それは、警察官に詰め寄る、1人の男性だった。


水本(みずもと) 麒一郎(きいちろう)・・・!」


奴の顔を見た瞬間、俺の直感が騒ぎ出した。もしかして、アリバイ次第では水本の犯行もあり得るのでは、と。動機は考えられる。浮気相手と本気になり、奥様が邪魔になったから、犯行に及んだ・・・。


ま、まさかな・・・。


でも、一応筋は通っている。奴にアリバイが無ければ、の話だが。


《ちゅうに探偵 赤名メイ⑫》へ続く。

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