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閑話 JKサイド

1万字超えちゃった。

ごめんなさい。

分割しても良かったけど、長さがマチマチでバランスが良くなかったのであえてツッコミましたm(_ _)m


まー、閑話なので、飛ばしてもらっても

さほど影響はないかな?


11話ほど後に投稿される話の一部で、

謙譲ゆずるがここの話に触る時に、なぜサツキがあんな反応になるのかなフラグだったりしますが

そこまで、影響はないはずです

side ミナコ


 瀧澤たきざわ美那子みなこは不幸な子だった。10年くらい前は、普通の家庭だったと思う。父の会社が倒産し、数年経つと父が狂変わっていった。あんなに優しかった父が、今では事ある毎に、拳を振るう。


 今の高校にも、母や祖父母が色々金策をしてくれて入れたが、それもいつ終わるか分からない。


 最近では、美那子は、消えてなくなりたいと思うになっていた。ある日、学校の授業が午前中に終わり、早めに帰宅するという状況になって、美那子は帰りたくないと強く思った。帰っても、家にいるのは父だけだろう。今の父と2人っきりはいやだった。


 校門を出て、堤防の上に立つと、川向こうの駐車場に、いつもの車が停まっている。クラスメイトの西丘さんや鈴木さんのとこで見たことのある車だ。美那子の通う高校は、中流家庭以上の裕福な家の子どもが多い。西丘さんのところも鈴木さんのところも大きさの違いはあるが、会社経営をしている。その会社、それぞれの駐車場にたまに、あの車が停まっていた。


 あの車は、月の半ばくらいには、よくあそこに停まっていることが多い。どんな人なのだろうと興味が湧いた。西丘さん曰く「ステキな殿方」、鈴木さん曰く「話を聞いてくれるいい人」。友だちの友里江ちゃんも話したことがあるらしい。この学校の生徒には、実はかなり有名な人らしい。本人は知らないだろうが。そりゃ、このまちの各会社を回っていれば、そこの子は知っているだろう。


 ちょっと遠いところにある橋を渡って行けば、会えるはず。ちょっとした冒険気分で、その車に近づいて行った。


 車に近づいたは良いものの、どう話しかけたら良いか全く分からなかった。そもそも、美那子は、あまり人に話しかけない。特に男の人は、父のこともあって怖いのだ。でも、話しかけたい。みんながみんな知っている人だ。「どうしたら良いだろ?」と困っていると、その男の人は、車から降りてきた。


「その制服は、○◇高校生だね?どうしたの?俺と一緒でサボりかな?」

「学校は、午前中で終わって。え?サボってるんですか?」


 あんなにあちこちの会社に来るっていう人がサボってる?!毎月いるよね、この人、サボってて生活できるのかな?もしかして、父と同じ?父はニートみたいなものだから、外に出てるし、スーツ着てるから違うよね?


「ありゃりゃ、警戒されちゃった?んー、帰りたくないの?」


 ドキっ!心が読めるの?すごい人だ。すごい人だから、サボってても大丈夫なのだろうか?きっとそうなんだろう。


 それから、スーツの人と近くのベンチで、色々と話した。普段はあんまり話さないのに。話してはいけないことまで話した気がする。いつの間にか16時を過ぎてて、スーツの人は、会社に帰って行った。美那子は、なんだか心が軽かった。


 あの日は、何もないただの平日だったはずだった。午前中の授業が終わり、教室から教師が出て行って、となりの教室から友里江ちゃんが来るまでは。友里江ちゃんとお弁当を広げようとした時に、突然、教室の床が光り出した。鈴木さんが話してた異世界召喚と同じ光。


 美那子は行っても良いと思ってしまった。心残りがあるとしたら、あのスーツの人だけ。ただ、住む世界が違う人だから、仕方ないとも思っていた。それでも、願わずにはいられなかった。また、会いたかったと。


 そして、異世界の第一印象は、「どこに行っても理不尽な環境は変わらない」だった。前の世界の家庭環境にしろ、今の奴隷状態にしろ、言うことを聞かなければ、苦痛にさいなまれる。どこも、変わらないのだ。もう諦めるしかない。


 そう思っていたのに、泣いている西丘さんを慰めていたら、声が聞こえた。


「元の世界に帰りたいか?」

「帰りたくない。」

「理由を聞いても良いか?」

「誰?」

「ありゃりゃ、警戒されたか?元の世界に返せる伝手がある者だな。理由を聞いても良いか?」


 私にしか聞こえないみたいだ。でも、あれ?この話し方って?え?スーツの人?ウソ?!なんで?すごい人だから?あ、理由を聞かれたんだ。前にも言っちゃったけど、覚えてないのかな?


「父が殴る。昔は優しかったのに。もう、会いたくない。でも、ここでも奴隷。世の中、理不尽。」

「分かった。」

「いなくなる?」

「また、後でな」


 スーツの人の「また、今度な」に重なって聞こえた。この人が、この世界に残るなら、私も残ろう。すごい人だから、こんな状況も変えてくれるに違いない。


 ここにいる4人以外は、ほとんど元の世界に帰ったらしい。声の人が残っているということは、帰らないのかな?城から出るなら、連れてってくれるらしい。うん、ついていこう。今度は、絶対に離れない!!


 城の外の路地で、姿を見せてくれた。スーツを着てる!!若くなってるけど、面差しとか雰囲気とかが同じだ。西丘さんたちも凝視している。西丘さんと友里江ちゃんの想い人でもある。でも、負けない。2人の負けない宣言の時に、出遅れちゃったけど、絶対負けない。西丘さんには圧倒的に負けてる部位はあるけど、友里江ちゃんにも負けてはいるけど大きさじゃない・・・はず。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


side ユリエ


 西郷さいごう友里江ゆりえは、いじめられっ子だ。小学生の頃も、中学生の時も、クラスメイトでいじめられていた。せっかく、校区が違う高校に進学したのに、中学校が違った、小学生の頃のいじめっ子がいて、高校ライフも辛い日々だ。


 学校行きたくないな〜。そう思いながら、学校に行く道を進んでいる。隣のクラスだったら、まだ良かったのに。


 隣のクラスには、高校からの友だちの美那子ちゃんがいる。美那子ちゃんも、何か辛いものを背負っているみたい。そんな雰囲気を感じ取ったのか。どちらともなく話しかけ、いつの間にか友だちになっていた。傷を舐め合うような事は口にしない。お互い触れないように、私は出来るだけ明るく、美那子ちゃんは出来るだけ口を閉ざして、行動している。


 それにしても今日は、いつにも増して、学校に行きたくない。サボっちゃおっか。もうすぐ、学校が見えるしんだけど。どこが良いかな〜。あそこの鉄道陸橋の下なら、バレないかな?


 しばらく、ぼーっとしてたら、駐車場に車が入ってきた。ヤバ、誰か探しにきた?あ、違う、毎月中旬くらいにいつも停まってる車だ。確か、この車って、お母さんの働いてる会社とか、お父さんの働いてる会社とかに来てるコピー機か何かの営業の人?


 うちの学校は、中小企業だけど、おぼっちゃまとかお嬢様が多い。美那子ちゃんのクラスメイトにも社長令嬢がいたはずだ。鈴木さんと、西 さんだったかな?そこにも来てるって、言ってた気がする。学校関係者じゃないし、まいいか。


 20代後半くらいの人だ。スマホで何か話してる。あ、こっちをちらっと見た?何だろう?電話終わったみたい。困った顔で、スマホを見ながら近づいて来た。


「○◇高校の西郷友里江さんで、間違いない?」


え?何で?!


「ありゃりゃ、警戒されたか。お母さんもお父さんも心配してたよ?」

「探しに来たんですか?」

「たまたま、お父さんの会社に仕事で行ったら、ちょうど、お母さんから電話が来たみたいでね。代わりに探します。って、来ちゃった。とりあえず、学校の近くからって思ったら、すぐ見つかっちゃったよ。ダメだよ〜。」


知らない人に怒られるの嫌だな〜〜


「サボるつもりなら、早退するとか、非通知で学校に連絡して欠席を伝えないと。バレちゃうよ」


あれ?

怒らないの?


「怒らないの?とか思ってる?知らない人に怒られても、効かないでしょ?怒る意味ないよ。お父さんがカンカンだったから、後で怒られてね。」


わー

その情報はいらなかった〜〜


「サボる方法を教えても良かったんですか?」

「良くはないけど、お父さんやお母さんに心配かけない方法は知っといても良いかな?行きたくなかったんでしょう?学校。」

「え、あ、はい」

「そんな日もあるよ〜。あ、でも、お父さんにもお母さんにも、この事は内緒ね。」


すごい良い笑顔だ

えへへ、2人の秘密かな?


「2人だけの秘密だよ。」


わー

通じ合っちゃった

ヤバ、ドキドキしてきた


「ありゃりゃ、これ、古かったかな?」


何かのネタだったみたい

でも、面白いこの人!!


 それから、お昼くらいまでお話しして、お兄さんは、会社に一度戻るからと家の近くのコンビニまで送ってくれた。私を降ろすと、車が去っていく。お昼ご飯の時間だからと送っただけかもしれない。コンビニでおにぎりとか買ったら、ちょっと時間を潰して帰ろうかな。帰ったら怒られるのか〜〜。ちょっと、憂鬱。


 コンビニを出たら、嫌な人たちにバッタリ会ってしまった。クラスメイトのいじめっ子だ。


「あー、お前、サボってたんでしょ。生意気だわ。買ったもん、寄越しなさいよ、ほら」


え〜〜

この時間にいるって事は

あなたも早退してサボったんでしょ?!


「早く出しなさいよ。ほら、早くぅ」


い、嫌だよ

あ、叩かないで!


「あ、西郷さんとこのお嬢さん。こんなところにいたんですか。お母さんが心配してましたよ。代わりにお迎えにあがりました。あれ?お友だちですか?」


お兄さん演技力あるぅ!!

ってか、いつ戻ってきたんですか?

会社は?


「ち、また、学校で」


 いじめっ子が、バツ悪そうに帰っていく。いじめっ子って世間体的に最悪だもんね。


「ありゃ、相当ヤナ感じだな。あんなのがいたら学校には行きたくないわな」

「お兄さーん、助かりました。でも、お母さんからまたお願いされたんですか?」

「あ、違うよ。同じ制服の子がコンビニに行ったんで、なぜか、戻らないとって思って」


第6感ですか?

シックスセンスですね?

ふふふ、嬉しいです


「どうする?このまま送ろうか?」

「そうですね。お願いします。」

「その分、早めに怒られるだろうけど。」


その情報はいらないです!

はぁ、思い出してしまいました。


「しばらく、ドライブしましょう!」

「くくく、良いリアクションだ。でも、いいの?ドライブデートになっちゃうよ?」


はわわ〜〜

そ、そんなつもりは・・・無いはず?


あれ?

あれれ?

ちっとも嫌じゃない?


「くくく、ジョーダン、ジョーダンだから。ゆっくり帰ろうか」


 結局、あちこちドライブに連れてってもらった。このまちも色んなところがあって、嫌な事はすっかり忘れてしまった。でも、帰ってから、母に泣かれ、父にしこたま怒られたのは、ちょっと嫌だったかも。


 そして、あの日はやってきた。美那子ちゃんのクラスに入ったら、いきなり、ピカッて床が光って、牢屋みたいな所に来ちゃった。牢屋から出ると王宮みたいなところで、「勇者だの、奴隷だの」って説明されて、「帰れない」っ聞いた。本当のクラスメイトの事が頭に浮かんでホッとしたけど、父や母とあのお兄さんの事を思い出したら、悲しくなって来た。


もう、会えないんだね


 そんな感傷に浸る暇もなく、ボロい建て物に移動させられた。クラスメイトじゃないし、友だちでもない人たちと一緒の部屋に、入れられちゃって、どうしたもんかと思ってたら、美那子ちゃんと割と一緒にいる、西岡さんが、泣き出しちゃって、オロオロするばかり、他の人たちも困り果てて出て行っちゃうし、どうしたらいいの?あ、美那子ちゃんを呼んでこよう。


 美那子ちゃん達に西岡さんを慰めて貰っていたら、声が聞こえて来た。他の人には聞こえてないみたい。


「元の世界に帰りたいか?」

「父母には悪いけど、帰らなくてもいいかな?」

「理由を聞いてもいいかな?」

「それよりも誰ですか?」

「ありゃりゃ、またか、警戒してるね。でも、安心していいよ。元の世界に帰れる伝手を持ってるだけだから。悪いようにはしない。」


 あれ?この口癖、あの人だよね?お兄さんも来ちゃった?あれ?呼んじゃった?心配して来てくれたの?シックスセンスだけじゃなくて、もっとすごい人なの?


 その後、お兄さんらしい人に色々話しちゃった。家族的に失踪未遂事件扱いされたあの時に、話したんだけどなぁ。忘れてるんだろなぁ。大人だし。微妙に子ども扱いされてたからな〜〜。でも、振り向かせてやる!


「んー、なるほどなぁ。分かった。」

「お、帰っちゃうの?」


 お兄さんと呼びそうになっちゃった。口癖が同じだけで、違うかもしれないし、多分、いや、絶対お兄さんだけど。帰ったら嫌だなぁって、この前みたいに、「また、今度な」って言ってくれないかな?


「また、後でな」


デジャヴ!

やっぱり、シックスセンスですね!


 その後、鈴木さんがぼーっとして、美那子ちゃんがぼーっとして、最後に西岡さんがぼーっとした上で、顔を赤らめた。ムム、ライバルの予感。おそらく、お兄さんが鈴木さん、美那子ちゃん、西岡さんの順番に話しかけたんだと思う。西岡さんに聞いてみよう。お兄さんの事を知っているのか。知っているなら、どんな関係なのかも!


 やっぱり、ライバルだった。西丘さんも私も片思い。ついでに「負けない」宣言をしちゃった。そして、ごめんなさいをした。岡だと思ってました、と。笑って許してくれたけど。


 しばらくしたら、お兄さんが戻ってきた。オタ5人衆以外は地球に帰ったらしい。もう一度、聞かれたけど、私も西丘さんも帰らない。ついて行くと決めている。美那子ちゃんもみたいだ。おや?また、ライバルが増えた気がするよ?ムム?鈴木さんも?鈴木さんは、一旦焦らすつもりらしい。たぶん、効かないよ。


 お兄さんに、周りから見えにくくするスキルを使ってもらい城を出た。少し歩いて、姿を現してくれた。え?若い!でも、お兄さんを若くしただけで、間違いなく、この人だ!今度は、デートだとおもって、デートして貰おう!きーめた!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


side カナミ


 鈴木すずき郁奈実かなみは、自他共に認めるオタクである。でも、クラスのオタク男子たちと違って布教はしない。別のクラスにいる腐った趣味の女の子たちとも違う。自分の中で完結させるのだ。でも、話を聞いてくれる美那子さんや佐津姫さんには、物怖じせずに話している。


 勿論、家族も知っている。他には誰も・・・、あ、会社に月1くらいで来るシオノさんには、話したっけ。


 郁奈実は、自分の名字が嫌いだった。凡百といる鈴木である。勿論、有名な鈴木も多いが。だから、歴史とかファンタジーな世界に夢を見たと言っていい。


 そんな郁奈実が、シオノ氏と初めて話したのは、高2になって、すぐの事。ずいぶん、前から、シオノ氏は、うちの会社に出入りしている。本来は、営業だけで終わる営業マンが、出入りしている理由は、よく分からなかった。その日は、父が急な用事で外出した日だった。父が出かける前、大切なお客様が来る予定だから、帰るまで対応しておくようにと言われた。そして、父がいなくなって、10分くらいで、シオノ氏が来た。


「こんにちは〜〜、ピ○リ○信のシオノです。社長、いらっしゃいますか?」


え?

割と有名な大企業じゃなかったっけ?

シオノ氏は、そこの社員さんなの?

わー、大企業の人の対応とか分かんないんだけど?


「申し訳御座いません。社長は席を外しております。帰社までの間、ここでお待ちください。」

「これは、ご丁寧に、ありがとうございます。では、失礼して、座らせて頂きます。」


砕けた感じがなくなった

父には、あの喋り方で、私にはこんな感じ


 郁奈実は、しばらく社交的に話をしていたのだが、ポロっとラノベの話をしてしまった。なんと、シオノ氏はついてきてくれた。有名どころだったからかもしれない。それとも、同じ種類の人間?とか思って、どんどん話しちゃって、シオノ氏はついてこれなくなったが。ニコニコと話を聞いてくれる。普通の人は。途中から嫌な顔したり、露骨に話を変えて来るのに、シオノ氏は違った。話を変えるにしても、ラノベタイトルなどから、こんな感じに変えてくる。


「転移モノと転生モノどっちが好きなんですか?」

「どっちも嫌いじゃないかな?」

「んー、なら、転生なら歴史転生とファンタジー転生どっちが好きですか?」

「んー、職業は?勇者的存在と生産職どっちがいいですか?」


 こんな感じで、聞いてくる幅が広いの。だから、あっという間に、父が帰るまでの時間が過ぎてしまって、父が社に入ってきて、父に苦い顔をされてしまった。


「ただいま戻った。郁奈実、席を外しなさい。すいませんね。うちの娘が、その」

「良いじゃないですか、社長。夢みる少女って感じのいいお嬢さんでしたよ。待ってる時間が楽しかったです。」


 私も父も社交辞令だと分かっている。分かっているけれども、父は娘が褒められて、私は良い風に表現されて嬉しかった。そこから、父とシオノ氏は色々話をして、夕食時に、父が楽しげに話していた。


「シオノ君は、出来る営業マンだな。つい、取引先の数社を紹介してしまったよ」

「珍しいね。お父さん、食事時にも取引であった人の話をするの。」

「うむ。郁奈実も婿にするなら彼みたいな男を捕まえるんだぞ。」

「いや、シオノさんにも彼女くらいいるだろうし、私にはもったいないよ。」

「あらあら、まあまあ、ふふふ、郁奈実も満更じゃないようね〜。」

「ちょ、お母さん!」

「え?い、いや、そ、の、だな。」

「あら、自分で振っておいて、それはどうなの?」

「かーさん?!」


 そんな会話をした、数日後、まさか佐津姫さん も(・)シオノ氏の事を好きっぽい事を知ってしまった。なんと、美那子さんの友だちで隣のクラスの友里江さんもやや佐津姫さんをライバル視してる感じから、もしかすると・・・。私?!いつもの感じで、オタクな話に持ち込んだよ。悪くは思ってないけど、どうなんだろ?


 そんなある日のお昼休み、センセーが教室から出たら、隣のクラスの友里江さんがこっちの教室に入ったいつもの昼休みに、な、なんと!異世界に召喚されちゃいました。牢獄のような部屋に。


 そしてたぶん、誰よりも早くステータスを確認。んー、平均ステータス15.5って高いの?低いの?でも、忍者!職種が忍者ですよ。ファンタジーで忍者ってのは、なくはない。主人公ならマイナーな気がするけど、たぶん、主人公じゃないだろうし。



 その後、いずれイケメンになりそうな年下の男の子が何かを唱えた後に、この牢獄のような部屋から出してもらった。さっきの呪文みたいなのなんだろうと、状態を確認して絶望した!称号に絶望した!奴隷って書いてあるの。カタカナの名前が前についてるから、この国の王子様の奴隷ですよ。忍者なら、仕えるべき主君は自分で選びたかった。「己を知る者の為に死す」って、憧れたのに。たぶん、みんなも奴隷の称号があるはず。「己を知っていない」はず。で、でも異世界だし。サイドストーリーなら、他国の王子様が助けてくれるとか。一緒に召喚してくれた人が・・・ないな。一様に落ち込んでる。オタ5人衆がなんかやる気だけど、彼らに助けてもらうくらいなら、王子様の奴隷でいいかな。どうせ助けてくれるなら、シオノ氏とか・・・、なんでシオノ氏が出てくるの?あるぇ?もしかして、私?


 長い妄想の中から現実に戻ってくると、他の女の子たちが啜り泣いてて、先に進まない感じ。王様とか王子様とかは傲慢な感じだったけど、太っ腹宰相さんは、そこまではないみたい。一旦、用意してある部屋で休憩して、また明日から本格的に鍛錬があるらしい。コン詰めすぎじゃないの?!っていうスケジュールだった。太っ腹宰相さんは、傲慢じゃなかったけど、強引ではあるみたい。足早に説明はするんだもん。ノルマは達成みたいな顔してるし。そんなんじゃ、出来る営業マンには、なれないよ?出来る営業マンっていうのは、シオノ氏みたいな・・・、また、シオノ氏の事考えちゃった。


 ボロっちい、アパートみたいな建物で待機しているが、どうしよう、ここで泣いている子、あんまり話した事ないんだよね〜。お!美那子さんが迎えにきてくれた。何々?佐津姫さんが泣いているだと?!慰めに行かねば!中では、友里江さんがオロオロしていた。佐津姫さんの対応を美那子さんに任せて、友里江さんの対応をしよう!


 しばらくすると、友里江さんがぼーっとしている。ん?戻ってきた?と、思ったら、今度は美那子さんがぼーっとしている?なんだ?何かあるのか?見えない、何か?ファンタジー!


「元の世界に帰りたいか?」

「え?誰?もしかして、精霊が、異世界召喚で奴隷にされた私に、チートなスキルを渡し忘れたから、それを届けにきてくれた?でも、忍者って、そこそこチートな職種だとは思うから、それを補助するようなスキルだと嬉しんだけど・・・。


閑休話題しばらくおまちください


それで、それで、拙者を助けてくれるというわけですね!」

「ありゃりゃ、夢見がちだね〜〜。そんな力はないけど、元の世界に帰せる伝手があるんだよ。」


あれ?シオノ氏?もしかして、シオノ氏が来てくれたの?!うそ!なんで?あ、帰りたいかどうかを聞いてたっけ?


「帰らなくていいです!」

「話から理由は予想がつくけど、理由を聞いてもいい?」

「憧れの異世界にいたいから!」

「なるほど、分かった。」

「あれ?お別れでござるか?」

「いや、また、後でな」


 その後、佐津姫さんもぼーっとした後に、真っ赤な顔でニヘラって笑った。たぶん、シオノ氏が佐津姫さんにも話しかけたんだろう。佐津姫さん、自分では気づいていないみたいだけど、いやらしい事考えてると、やや下品に笑うんだよね。


 ん?いやらしい事考えてる?!え?狙ってますの事?あ、でも、忍者で女ならあの術が使えないと!ないんだよな〜〜スキル欄に。処女だから?知識はあるのに、処女だからか!!まずいな。覚えないと!


 結局、私と佐津姫さんと美那子さんと友里江さんはこの世界に残るみたい。シオノ氏と思われる男性が他のみんなを連れてどこかに行ってしまった。友里江さんが佐津姫さんに向けて、ライバル宣言をしていた。佐津姫さんは受けて立つようだ。私はしのぶこころで、決意する。負けないと。


 シオノ氏とおぼしき男性は、隠遁の術が使えるらしい!人にぶつかったりしなければ周りに見えないとか、どれだけすごいんだ。ヤバい、忍者としてのアイデンティティが、早めにあれを覚えないと!!自慰で行けるだろうか?初めては、殿に捧げたいのだが。


 皇城おうじょうを出て、少し歩いたところで、路地に入って、姿を見せてくれた。間違いない!シオノ氏だ!若返ってるのは、私もメインじゃないかもしれないけど、ヒロインの1人だからだろうか?さすが、ファンタジー!早めにあれを覚えて、寵愛を死守しなければ!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


side サツキ


 西丘にしおか佐津姫さつきは、恋する乙女である。小学校6年生の時の事だ。NISHIOKA建設の社長令嬢であった、彼女が誘拐されそうになった時に助けてもらった事、それがきっかけである。


 あの日は、平日でいつものように、ランドセルを背負って、歩いて帰宅していた。社長令嬢とは言え、一地方の中小企業社長の娘だ。車での送り迎えなど普通にありはしない。いつもの道を寄り道せずに、帰っていた。自宅まであと数100mのところにある曲がり角を曲がると、黒いバンが止まっていた。佐津姫は変なところに止まっているなと思いつつ、その車を横切ったところで、背後から羽交い締めにされ、車に連れ込まれた。


 ジタバタ暴れる私を誘拐犯たちは、口や手足にガムテープをぐるぐる巻きにつけた。誘拐犯は3人。運転手と羽交い締めにした奴とガムテープをぐるぐる巻きにした奴。ガムテープでぐるぐる巻きにした奴は、その後も体のあちこちにを触ってくる。気持ち悪いと思ってたら、羽交い締めにした奴に何か言われて、ニヤニヤしている。その気持ち悪い奴が、両手をニギニギして、近づいてきた時だった。信号待ちか何かで、車が止まったタイミングで、バン後部座席の扉が開いた。


 そこからの出来事は、まるでアクションドラマのようだった。まず、気持ち悪いニギニギニヤニヤ男は、バンの扉から突き出された拳に吹っ飛ばされ、羽交い締め男は吹っ飛ばされた男の巻き添えで逆側の扉とサンドイッチになっていた。運転手の男は、振り向き様にカウンターが入り、謝ってハンドルを切って、一方通行の壁に車ごと突進。私は、気持ち悪い男を殴った人に抱えられ、車道側の芝生の上にダイブしていた。


 しばらく呆然としていると、誰かがが通報したのか、警察官がたくさん来て、私を保護し、助けてくれた人を連れて行こうとしていた。「その人が助けてくれたんです。捕まえないでください!」とトンチンカンな事を言ってしまったらしく、保護してくれた警察官のお姉さんに笑われた。


 助けてくれた人は八和しおの謙譲ゆずるさんと言う。八和さんのお爺さんの家が神主さんで、祖先が塩野神社で修行した時に、元々「やつわ」だった名字の読みを「しおの」に変更したらしい。「珍しい苗字でしょ?本当かどうか知らないけど、そういう言われなんだよね〜」と軽い調子で教えてくれた。Web人名辞典とか調べてみたけど、八和で「しおの」と読むのは間違いないんだけど、由来までは分からなかった。


 今考えれば、吊り橋効果だったんだと思う。怖い思いをして、助けてくれて、大好きになった。でも、その気持ちも数年続けば、本物だ!


 そもそも八和さんが私を助けてくれたのはたまたまらしい。当時、私の家は自宅兼設計事務所だった。そこに複合機の営業で、アポイントを取っていて、訪問の約束の時間に来たら、攫われていく女の子が見えたらしい。会社にいた母に、「子どもが誘拐されたっぽいんで、助けて来ます」と伝えた後に、車で追いかけて来たらしい。どうやったら、一方通行で一旦停止した車の後部座席のドアを開けられたのか今でも謎だが、結果的に助かったのだから気にしないでおこう。


 あの件以来、八和さんは父の大のお気に入りで、何かあるたびに、うちに呼ばれている。娘の誕生日だ、娘の卒業式・入学式だ、など私は嬉しいのだが、あちらも有名企業の社員さんだ。そうそう呼んで良いものでもないだろうに、それでもニコニコやって来る。


 どうしても気になって、中学を卒業する頃に聞いてみた。小6、中1の頃は嬉しくて、中2、中3の時は恥ずかしくて聞けなかった。もうすぐ高校生となれば、大人の第1歩みたいな経験も増えてくる。だから、真面目に答えて欲しいと前置きをした上で、呼ばれたらなぜ来るのか聞いてみた。


「ありゃりゃ、暇人だと思われてたのかな?真面目な話ね、営業マンにとって何が契約に繋がるかというと人との繋がりなんだよ。特に、訪販の場合はね。だから、『ただ話したい』とお得意様から言われたとしても、そこから実績に繋げれば良いのさ。話を聞いた結果、知人・友人を紹介して頂ければ、販路が開けるからね。」


 八和さん曰く、営業とは商品を気に入ってもらうためには、人を気に入ってもらわないといけないらしい。気に入らない奴からは買いたい商品であっても、買いたくないと思われてしまう。そうなると、自社ならまだ良いが、他社からとなると大損なのだと言う。だから、人との繋がりを大切にしているのだと言う。


 私はそれでも、八和さんが打算だけで動いているとは、思えなかった。打算だけで動いているなら、目の前で起こった誘拐事件も車で追いかけて行くなんてことはしないだろう。そう思うから。


 高校に入り、二年になった。友だちも増えたが、相変わらず恋は片思いばかり、それなりにモテたが、物足りない。ひとまわりも年上を好きなのだから仕方ないが、八和さんは、割と有名だった。色んなところで助けられた人が多い。そして、ライバルも。でも、みんなの共通点は子ども扱い。


 そんなある日、私たちは、異世界に召喚された。そして、奴隷にさせられた。皇太子の奴隷らしい。それ以外の人にはそこまでの抑止力がないらしく、私を含めた何人かが、絶望の為、動けずにいると、ボロアパートのような建物に連れていかれた。


 私はずっと泣いていた。八和さんともう会えないと思って。でも違った。どこからともなく、「元の世界に帰りたいか」と聞こえて来た。警戒心をMAXにしていると、「ありゃりゃ、やっぱ警戒されたか」と呟く男の声だ。声質が出会った頃の八和さんのもの、口癖は相変わらず、営業の時の朗らかな話し方ではなく、誘拐犯に対応した時の硬い話し方。間違いなく八和さんだ。


 前々から、どこかに行ってしまいそうな雰囲気はあった。おそらく、前の世界が退屈で、こっちについて来たのだろう。八和さんと行動すると不思議なことがたくさんあった。なぜついてこれたのかなんて不思議は、思わない方が心に優しい。


 八和さん(仮)が出て行った後、隣のクラスの友里江さんにライバル宣言をされてしまった。郁奈実さんも多分美那子さんもライバルだと思う。宣言をしないのは、まだ、決まってないのか、作戦なのかは知らないけど、間違いない。


 八和さん(仮)が皇城から連れ出してくれた。すれ違うのに誰も気がつかない。また、不思議だった。皇城を出た後に、姿を見せてくれた。さっきから思うんだけど、あんなに顔を合わせてたのに、気づかれてないっぽいのが、地味にショックだ。でも、今は同い年!絶対に夢中にさせるんだ!

実は、謙譲ゆずると高校生たちは知り合いだったというネタバレ話です。


謙譲ゆずるが覚えていない理由は3/25投稿分までお待ちください

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