第14話 やっぱり、ニーズがあるらしい
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幌に入ると、エルフの1人が睨んでおり、他のエルフは犬獣人と猫獣人と兎獣人を庇うようにこちらを見ている。総じてエルフたちからは「負けない」「屈しない」「この子達を守る」という意思を感じられる。それにひきかえ、獣人の方はやや怯えているようだ。最初から睨んでいたエルフが口を開く。
「妾らをどうするつもりだ。」
エルフや獣人を鑑定しても、なんとかの森みたいな感じの出身地しか分からない。この世界に来たばかりの謙譲には、その森が帝国領土の森なのかそうでないのかの判断がつかない。なので、こちらは一旦保留とする事にした。
「悪いな。そっちは、後でいいか?まずは、こっちの女騎士たちから対応したい。」
「どういう事じゃ!!」
「詳しい話は後でするよ、サルティーヌの森の女王様。」
「貴様!鑑定持ちか?!」
エルフが激昂してるが無視だ。主人設定をしていないのだが、あの首輪にはそれなりの効力があるようだ。襲いかかっては来ないし、魔法の発動兆候もない。先程から睨んだり激昂したりしているエルフ、ケレブリルの称号は「サルティーヌの森の元女王」となっており、固有魔法に精霊魔法、属性は元素属性Lv.8と雷属性Lv.7、光属性Lv.6とかなり高い。しかし、攻撃しないのか出来ないのか分からないが、口だけなら放置しても構わない。
さてと、エルフではない方の肉塊に目を向ける。辛うじて膝や肘まで残っているのが10体、両腕がなく膝から下がないのが1体、両腕がなく太ももから下も無い、所謂肉ダルマが1体と酷い有様だ。確かに積んでくれとは言ったが、本当に積まれている感じで、下の方になっている者たちは、辛うじて息はしているものの、最早廃人以外のなにものでもない。
肉ダルマって
ダークファンタジーだけかと思ってたよ
あ、ファンタジーか、この世界
それにしても、もっと気持ち悪く感じるかと思ったが、そうでもない。地球にいた頃なら、吐いていたと思うような光景なのに。
《マスター、固有スキル「完全耐性」「完全無効」の影響です。状態異常攻撃に対する耐性や無効化と思われがちですが、生活面でも影響するからこその固有スキルなのです。》
なるほど
だけど、うちの娘たちにはきついだろうし
そのままにするつもりはないけどね
一通り鑑定して、一番酷い状態の肉塊が、救出対象の騎士だと思われる。思われると言うのは、職種が騎士Lv.4〈ペサジャストン王国所属〉となっているからだ。第二王女の騎士とか称号に付いてれば分かりやすいのだが、そういうシステムではないらしい。彼女の名前はパルヴィ、最早彼女と言っていい物体かは分からないが、治すのだし、彼女でいいだろう。パルヴィに近づいて行くと、射殺さんばかりに睨んだ上で、最後の抵抗とばかりに、口を開く。
「くっ、殺せ」
クッコロ頂きました〜〜!
ではなくて
オークに言ってよ、その台詞
でもないよ!
「あー、殺せないよ。救出対象の騎士を殺したら、依頼破棄と同じでしょう。」
「え?お前は盗賊の一味ではないのか?」
「違う違う、何を勘違いしたのか知らないけど、はい、ギルド証。」
「し、Cランク冒険者!これは失礼、奴らの話を聞いてしまい、こんな体にされたのです。迎えに来たあなたがその一味かと思ってしまいました。」
「なるほど、そんな情報でしたもんね。しかし、その体は不便でしょう。少しじっとしていてくださいね。リヴァイブ!」
謙譲は、パルヴィに治癒魔法をかける。それにしても気味が悪い。なくなったはずの手足がニュルニュルと生えて行く様は、再生持ちの魔物みたいだ。呆けていても仕方ないので、他の女騎士達にも治癒魔法をかけていく。折り重なっている人たちは、幌の外に風属性で浮遊させて運んだ上で、「ほい、リヴァイブ」「はい、リヴァイブ」と回復させていった。最初は、騒ついた雰囲気だったが、皆が回復した頃には静かになった。
先程までギャースカ言っていたはずのエルフを含め、18人はまるで神に祈るかのように跪いている。特に12人は裸のままだ。
しまった
布くらいかけてやるべきだったな
いい眺めだけれども、これはまずいな
「あ〜、服の用意もなくて、ごめんね。ちょっとまってね、何か布を」
「聖者様、私どもに、そのようなご配慮は無用です。」
【職種「聖者」が選択できるようになりました。】
おぅふ
人に呼ばれてもですか
「あの、聖者様?」
どうやら、凹んだ表情を気にしたらしい。失礼な態度だったのではと、焦っている。
「あ〜、ごめんね。俺は聖者じゃないんだよ。ただの冒険者だから、そんな畏まらなくても良いんだよ?」
最初に楯突いた感じだったエルフが顔を上げずに、跪いた姿勢のまま、ススッと近付いてくる。
器用だなぁ
「先程の魔法は伝説に聞く治癒魔法。あなたが聖者でなくて、何だと仰るのですか?」
あるぇ?
さっきと態度が違いすぎませんか?
ケレブリルさんや
「あー、秘密じゃダメかな?ダメだよね〜。」
「構いませぬ。主人殿の秘密を暴こうなど、万死に値します。お許しください。」
ええ?!
あるじ?!
「待って、待って。何で急に?」
「妾らを買ったのは、そういうことではないのですか?」
「あー、そう思うよね。でも、ちょっと違うんだ。そっちはそっちで依頼を受けたんだよ。帝国を出て行くついでに、東側で攫われた亜人や獣人を助けて欲しいとね。」
「ほぅ!ならば、妾は問題なく、主人殿に仕えられるな。後ろの5人が、その依頼の子らじゃろう。」
「「「「「ケレブリル様、ずるいです!私たちも」」」」」
なんかデジャヴ
俺の奴隷にはニーズがあるの?!
そんなことを考えていると、エルフらとは違う方向、つまり、女騎士達から熱い視線を感じる。
え?君たちも?!
仕える君主とかいるんじゃないの?!
ちなみに、パルヴィ以外の騎士の名前は、ピーア、ライサ、レーッタ、リーッカ、サデ、サイニ、サイマ、シリヤ、シルパ、ソニヤ、スヴィという。それぞれペサジャストン王国以外の騎士なのだが、謙譲がパルヴィ以外に声をかけなかったことで、おそらく、国からの依頼はないと感じたようだ。そうなると、護衛対象は最悪死亡扱いだろうと。つまり、自分たちも死亡扱いになっているだろうと、察したらしい。
今、謙譲は奴隷を増やすか真剣に悩んでいた。理由は、固有スキル「王の器」だ。先程、人の言葉でも職種が増える事が分かった。直感がビシバシ警告してくる。長命なエルフなんか(主にケレブリル)が、この類を知っていて進化させるのではないか。そんな予感がするのだ。
だが、この世界に来る時、遠慮なんてしないと決めた。自重しないと決めたのだ。なら、人外量産機でも、良いじゃないか(ヤケ)。
「分かった。だが、ステータスの変化を見ても、驚くなよ?とりあえず、その首輪嫌いなんで、外すぞ。」
謙譲は、ピンポイントで破壊魔法を使用する。18人の首輪が一斉に破壊される。その後、全員に向けて、契約魔法を行使、18人との奴隷契約が成立した。体が軽くなったと感じたメンバーのうち、ケレブリルが呟いた。
「こ、これは・・・!」




