第12話 情報収集
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今後の方針も決まったところで、宿屋を出た。女の子たちは、服を買いに行くと言う。自分も数着買うところまでは、付き合うことにした。彼女たちの服を何着か選んだあと、自分でも自分の服は選んだが、彼女たちの見立てた服も買い、それ以降は、自由行動とする。本来は、奴隷が大金を持って、主人と別行動など有り得ないのだが、契約魔法による奴隷は、外見からはそうは見えない。それに、見る者が見れば、装備品の全てが伝説級なのだ。そんな装備の奴隷がいるとは思ってもみない。
謙譲は、彼女たちに、冒険者ギルドに行くからと伝え、ギルドと市役所の間にある噴水公園を待ち合わせ場所にして、一旦別れた。
謙譲は、皇城にいた他国の奴隷姫や他国貴族の奴隷令嬢が気になり、情報を集めることにしたのだ。もし、攫われて来たのなら、掻っ攫う気だ。人質の意味合いがあるなら、奴隷にはしないだろうし、攫われて他国が脅されているなら、それを利用させるつもりはない。
それに、これから向かう、東のペサジャストン王国の姫も含まれていた。勿論、召喚者たちの目に入るようなところにはいなかった。あちこち、隠し部屋探しをしている最中に見つけたのだ。独立した10数もの部屋に入れられた奴隷姫や奴隷令嬢たちには、ほぼ交流がないようだった。一緒に来たのか攫われたのかは不明だが、同室になっているのは、元専属メイドとついている奴隷だけだったと記憶している。
謙譲には、情報を得る為の伝手が少ない。勿論、ペンダントを使えばすぐだが、あの面白げなギルド長に聞いた方がいい気がした。
謙譲は、冒険者ギルドに足を踏み入れた。一瞬、ちらっと視線を感じるが、昨日の今日だ。殆どの奴らが、目を合わさないように下を向く。昨日の事を知らない。連中が、チラチラみているが、下を向いた連中に何か耳打ちされると、青ざめて右に倣えだった。
ギルドの受付にジョンソンがいない。今日の受付5ヶ所は全員女性だった。4人が若い綺麗どころ、1人が綺麗どころではあるが、他の4人に比べるとやや年上だ。と言ってもギリギリ20代前半くらいか。その年上の女性のところに並ぶ。順番が来たので、ギルド証を出し、「ジョンソンがいないか」と尋ねる。
「ユズル様ですね。現在、ジョンソンは席を外しておりますが、ギルド長に御用でしょうか?」
出来た受付だ。おそらく、本来ジョンソンと同じようにギルド幹部としての役割があるのだろう。小声で聞いてくるのもありがたい。謙譲は、軽く頷いた。
「今日はどのような御用でしょうか?私で対応出来る範囲かの確認です。」
「ここで口に出せる内容ではないが、ギルド長の依頼の件に関わる情報かもしれない内容だと言えばいいか?」
「申し訳ありません。ギルド長直々の依頼については、私では対応出来かねます。少々お待ちください。確認をとります。」
受付で5分ほど待っていると、先ほどの女性が戻ってきて、ギルド長室まで案内してくれることになった。今、帝国の役人が来ているらしく、一度控え室に案内された。謙譲は、敢えて普段はOFFにしている固有スキル「親愛度・忠誠度上昇極大」をONにすると、案内してくれた女性キャシーから帝国に関する情報を手に入れた。途中、ギルド長らの話が長くなっているからと、お茶を運んでくれた別の女性職員も交えて、仲良くなった。
世界的に見て、帝国の異世界召喚は、奴隷召喚として有名らしく、普段なら各国から反対の声が上がるらしい。しかし、今回はどうしたことか、その反対がほぼ起こらなかったとか。敵対していることで有名なペサジャストン王国からでさえ、軽い抗議程度だったらしい。以前なら、攻め込んででも止める勢いでの反対があるだけに、腑に落ちない事が多いと彼女らは教えてくれた。
そして、最も重要な情報も手に入れた。帝国は、麾下に置いた国も含めて、人質は取っていない、という事だ。つまり、そういう事である。
だいたい、1時間ほど楽しく過ごしていると、別の女性職員が呼びに来た。お茶を持って来てくれた女性職員とは、控え室前で別れ、キャシーとともに、ギルド長室に向かう。お茶汲み女性職員は、名残惜しげに去っていく。ギルド長から入室の許可を取ると、そこでキャシーが去っていった。謙譲は、入室前に、固有スキル「親愛度・忠誠度上昇極大」をOFFにする。
「すいません。。昨日の今日で、来てしまって。ところで、お役人さんは、何の用だったんですか?もう追っ手が来てるとか?」
「いや、そうじゃないさ。逃亡者の徴収さね。週一で来やがる。ウザいったら、ありゃしないよ。ところで、何かの情報をくれるらしいじゃないか。何の話だい?」
「いや、皇城で見かけた内容の裏を取りたくてね。ここに来たんだが、待ち時間でだいたい分かったよ。」
「ほほぉ、キャシーが喋るとはね。あの子は、口が堅いんだが、どんな魔法を使ったんだい?」
「いや、簡単なこの国の常識を聞いただけだ。キャシーは、俺に重要な情報を抜かれたとは思ってないさ。」
「ほぉ、帝国の常識ですら、重要な情報になり得るんだね。」
「そこで、確認だ。ここからがとても大切な事だが、召喚の1ヶ月以上前からこの1年の間に、他国の姫君や大貴族の令嬢が失踪したりはしてないかい?」
「ん?話が繋がらないが、失踪があるか無いかが重要なんだね。結論を言うと『あった』だ。全ての事案が解決した事になっている。そう発表されたからね。」
「ありがとう、裏が取れた。」
「何?!まさか。」
「ああ、皇城にいたよ。見かけたのは、12人かな?王子っぽいのは数えてないけどね。それを救い出そうかと思うが、出来れば依頼にして欲しい。」
「んー、そこまで、腐ってるのかい。」
「召喚反対の声を出来るだけ抑える為だろうね。」
「絶対失敗出来ない召喚だったわけだ。しかし、結果は失敗してる。要人の価値が0だね。依頼には無理だよ。解決した事になってる事案だ。困ったね。」
「いないのにいることになっているのか、ただ解決したと発表されただけなのかによって、対応が変わるね。」
「ペサジャストン王国以外は、解決したとだけだ。ペサジャストン王国は、形式だけの発表、冒険者ギルド及び魔法士ギルドの上層部にのみ捜索依頼を継続中だね。」
「分かった。ペサジャストン王国の依頼を代行しよう。どうせ、そこに行くつもりだし。残りの国の事は、情報魔法を使って調べるよ。」
【固有魔法「情報魔法」を獲得しました。】
おぅふ、マヂか
言葉の綾だったのに
「情報魔法?聞いたことがないね。おや?どうしたい?」
「あ、いや、うん。ここで見せますよ。」
今手に入れた固有魔法「情報魔法」を展開する。子どもがすっぽり入るくらいの大きさの、薄い結界風な球体が、ギルド長室の応接テーブルの上に展開された。球体の中に、帝国を中心とした地形パノラマが表示され、その球体に触れながら、キーワードを口頭で入力していくタイプの魔法だった。キーワードは、「皇城にいる奴隷の出身地」「帝国以外の王侯貴族の子息令嬢」をAND検索した。結果は17人。5人が男で12人が女。うちペサジャストン王国第二王女を除く全員が、祖国では死んだことになっていた。
世知辛い
「こ、これは。内容もさる事ながら、凄まじい魔法だね。どれくらいのMP消費だい?」
「あー、固有スキルの影響で消費は無しだ。」
「ありゃ、参考にならないね。消費量によっては、魔法書にして欲しいかったんだが。」
魔法書に出来るの?!
え?消費量分からないとダメ?
《マスター、MP消費は5000です。》
「消費量は分かるよ。5000だ。」
「あー、SSSランク以上の魔法士なんて、滅多にいないよ。まぁ、作って欲しいのは間違い無いね。」
「すまん。直ぐには無理だ。落ち着いたら、ペサジャストン王国のギルド経由で送ろう。」
「本当かい?言ってみるもんだね。でも、無理はしなさんな。これだけで世界が変わる魔法である事は間違い無いからね。」
「まぁ、固有魔法だしな。ギルドにある水晶みたい魔道具にすれば、普及はできるのでは?」
「魔法書を魔道具で読み込むのかい?!それを作っただけで、Lランクに昇格だよ!本当に常識が無いんだね。」
なるほど
知らない事が多すぎだ。
もっと勉強しよう
とりあえず、ペサジャストン王国からの依頼は代行、その他の奴隷姫や奴隷令嬢は契約変更で手に入れよう。第二王女は契約変更の後に、解放だ。王子?それは知らない。いたの?気づかなかった。




