プロローグ2
『・・・え?』
俺の脳内の声がその驚きの声と共に一旦止む。
あまりの疲れにどうやら幻聴を聞いてたのかと思い直した矢先、再度その声が響く。
『・・・な、なんで亡くなってないのですか!?』
「たとえ幻聴だとしてもその一言は割りと傷付くんだが!」
『・・・解りました、ええ解りましたとも。』
少しずつ淡々としていた脳内ボイスさん(神)の声がヒートアップしてくる。
『貴方の運命は一度死ぬことが確定してしまいました。』
声のトーンが少しずつ下がっていく脳内ボイス(神)さん。
『これは覆されてはいけない事実。』
何か嫌な予感がする。
『故に。』
バチン、と突然目の前のパソコンが音を立てて電源が落ちる。
『故に、故に、故に。』
次々と俺の周りの机や椅子がガタガタと音を立て動き回る。
『貴方には、死んでもらいます。』
そして脳内ボイス(神)のその宣言と共に机や椅子がぴたりと止む。
静寂。
「・・・え?」
『・・・え?』
俺は自らの身体を見回す。
なんら変わりない。
まるで生きているかの様な。
いや、これは。
『何で死んでないんですかぁ!?』
「俺に言われても知らないからぁ!!」
2徹明けの頭に女性のかん高い叫び声は響く、俺は学んだ。
その叫びを最後に脳内ボイス(神)さんの声が止む。
「・・・もう帰っていいかな・・・。」
俺はそう思って深く腰掛けていた椅子から立ち上がり、帰り支度を始めた。
「ぐっ・・・!?」
突然息が詰まる。
呼吸が、出来ない。
「ま、さか・・・」
頭に鈍い痛みが走る、苦しさでどうやら倒れ、頭をどこかにぶつけたらしい。
「く、そが・・・っ」
そして視界が、暗転した。
※
『・・・貴方は死にました・・・。』
目を開けるとそこは真っ白な空間だった。
そしてその中央に一つだけある椅子に腰掛けた綺麗な女性が俺にそう告げた。
苦渋に滲んだ表情で。
『・・・。』
「・・・。」
お互い無言で顔を見合わせる。
すると目の前の綺麗な女性が、ため息を吐きながら、眉間によった皺を伸ばす。
『・・・心外な事ではありますが。』
「・・・あっ!」
その冷静さを取り戻した女性の淡々とした口調には覚えがあった。
そうして少しずつ湧き上がる怒り。
「運命だか何だか知らないが、俺の事殺しやがって!!」
俺はその理不尽さに苛立ちと共にその女性に駆け寄る。
だがその女性の二の句に俺はまた立ち止まることを余儀なくされた。
『貴方は、私でも殺せませんでした。ですから、「心外」だと、言ったのです。』
「・・・え?」
俺はその一言に頭が更に混乱する。
「え、じゃあ、ここは・・・?」
この白い空間は何だ?死んだからこんな場所に居るんじゃないのか?
もしかして・・・夢か・・・?
あの脳内ボイス(神)から既に夢で、これも夢の世界なのか・・・?
いやだけどあの時覚えた胸の苦しさや息の詰まる感覚は本物だったはず。
そんな俺の混乱に答えるように目の前の女性はため息を吐きながら眉間によりそうになった皺を指先で伸ばしつつ答えた。
『貴方は死にました。死因は・・・。』
そこで渋りつつも再度ため息。
そして口早に告げる。
『神の嫉妬でも、運命を執行しようとした神の力でも無く、死因は、「エコノミー症候群」です。』
「・・・えええええええ!?」