プロローグ1
『貴方は大変申し訳ないのですが、死にました。』
『ですが貴方には二つ選択肢があります。』
『一つはこの世界、地球でもう一度生を受け生まれ変わる。』
『そうしてもう一つは、異世界で新たに生を受けそちらで生きる事。』
『最近の流行の異世界転生って奴ですね、貴方もよく嗜んでらっしゃったラノベという奴のテンプレですが。』
『よろしければ、私としてはそちらをお勧めしたいです。』
『いかがでしょうか?』
矢継ぎ早にそう頭に響く声。
俺はその声を聞かなかったフリをする。
『悪いお話ではないとは思うのですが・・・。』
『ある程度の融通は利く様に致しますし。』
『それに、このまま死んでしまうには、貴方には未練がありすぎると思うのです。』
『24歳にして童貞、それに伴い彼女もおらず、一日ずっとパソコンとにらめっこしながらのお仕事。』
『どこにでもそんな方いらっしゃる、とお思いでしょうが、貴方は今日ここで死ぬ運命ではなかったのです。』
『本来であれば、お仕事が終わり帰り道にとある女性と出会うのです。』
『何とその女性は貴方の人生のパートナーになるべく人でして。』
『とても美人で器量もよく、笑うとぱっと花が開くような笑い方をする可憐な女性だったのですが。』
『とても言いにくいのですが、私たち神々の一柱にそんな彼女に惚れ込んでしまった神が居まして。』
『何といいますか、嫉妬で貴方を殺してしまったのです・・・。』
『その神は私共他の神が文字通り天罰を加え亡き者と致しましたが。』
『ですが「神に殺された人間」は生き返らせることが出来なくなっておりまして・・・。』
『様々な特典もお付けします、ですから転生など、どう、でしょうか?』
俺は次から次へと脳内に響くその声に、指の先で眉間の皺を伸ばした。
作業をしてた手を止め。
「あの・・・。」
『はい、なんでしょうか。』
俺はその頭に響く声の主に対して一言。
暗くなったその室内で。パソコンの明かりだけが付いた大きな俺の仕事場で。
「・・・俺、まだ死んでないんですけど。」