暖かい雨
その日から、彼女は食事をやめました。
食べ物を見ただけで、
何も無い胃が逆流してくるので、彼女の家に食べ物はありません。
なら僕も一緒にと。
彼も食事を止めました。
もう何日経ったろう。
この頃睡眠の回数が増えてきて、
頭がボーっとして、
今が昼か夜かもわかりません。
ああ、雨だ・・・
水の中に居るような温さ。
睡眠の回数が増えた事もあり、
布団の中に居ることも多くなり、
エッチの回数も増えました。
ただ頭がボーっとして、
感じているかどうかも解りません。
ただ、白く暗い顔が少し赤くなっていることだけ解ります。
触れ合う私たちの体は、
とても冷たかった。
彼は私の浮き出た骨にキスをしてくれます。
無くなった胸にも、切り落としたようなお尻にもキスをしてくれます。
ただ、彼の唇はもう赤くなくて、
枯れてて、こそばゆいだけです。
時々枯れた唇が裂けて血が出て。
私の体に小さな血のキスマークをつけて行きます。
もうこの頃互いに服は着ていません。
重くて・・・。
恥かしさや緊張を通り越してしまえば、
気持ち良くは無いんです。
エッチは。
触ったり突っ込んだりかき回したり、
時には互いに傷つけあっても、
やっぱり気持ち良くはないんです。
小さな刺激がそこにあるだけで、
それが気持ちいい気持ちいいって思い込んでいるから・・・
何でしたっけ? パブロフの犬でしたっけ?
ああ、頭がボーっとしてきました。
また寝ます。
彼が、
たまには雨が降っている間だけ起きていようと言いました。
ごめんなさい、寝ます。
この頃夢を見ないので、
ずーッと起きている様な感覚です。
ずーッと現実に居るような気がして。
なんだか、損した気分ですね。
私の浮き出たアバラとむ、しぼんだお腹を見て。
なんだか楽器みたいだと彼は言ってきました。
自分も同じなくせに。
私は気分を害したので、
自分のアバラを彼のアバラに押し付けて上下に擦りました。
音は鳴りました、
でも雨音には負けます。
静かな雨音は何時だって気持ちいい音色です。
エッチをしているとき。
お互い其処だけお肉が残っているんだねって言って、
笑いあいました。
もう二人はバケモノに近いのだと思います。
二人とも顔の骸骨がわかるぐらい変形してて・・・
そういえば私、えくぼがなくなりました。
彼も気に入ってくれてたんだけどな・・・
どんどん雨が降り続き、
水が土の中で泳いでいるのを見ながら、
私たちはやせ細っていきました。
土はぶくぶくと膨れ上がって、
人を飲み込みます。
美味しい?
彼もエッチが気持ちいいものだと、感じなくなったみたいです。
冷たい精液も出ません。
ただ二人で寄り添う時間を楽しむようになりました。
寄り添うとお互いの骨がぶつかって音が鳴るんですよ。
でも私はちょっとつまらないです。
暖かい雨に触れたくなって、
私は外へ出ました。
裸ですけれどもう感じません。
骨と骨の間の皮の膜に、
雨だまりが出来て、
それがとても重くて。
髪の毛が雨の重さに負け、
どんどん抜けて行きます、
彼が気に入っていた髪ですから少し残念です。
暖かい雨の中に居ると、
なんだか頭がボーっとしてきて、
眠くなってきました。
彼が起きていようと言いました。
ごめんなさい、
私寝ます。
彼も、
なら僕もと、
一緒に寝てくれました。
おやすみなさい。
あの・・・
私、顔赤いですか?