6話 ---詐欺物剣---
武器の区画に入った。
傭兵や騎士らしき人達が色々品定めしている。
さて、この世界の武器の性能見分と行こうか。
剣だが、雑多に樽に突っこんであるのもあれば、額に入れられ飾られている物もある。
「店のお兄さん。こっちの剣とあの剣。なんで値段が10倍も違うの?」
「坊ちゃん。この剣は鋳造。ドロドロに溶かした鉄を型に流し込んで作った剣で一度に5本ぐらい作れる。で、あっちの高い方は鍛造。鉄の塊を熱して叩いてを繰り返し、時間をかけて一本一本手作りしたから高いんだよ」
「ふ~ん。すごいんだ。ねえお兄さん。両方の剣、ちょっと抜いて見せてよ」
僕の眼は魔力を見る事ができるが、それは通常魔力のみならず、物質の内包魔力も見て取れる。
それが見えれば物の均質具合ぐらいは視認できる。
安い剣は、一応焼き入れはしてあるようで、表面は強固なようだが、中心部に向かっってグラデーションがかかるように構造が変化している。
一方高い剣は構造がそろっている。表面もきれいに研磨され、装飾も素晴らしい。が。
「こっちは素晴らしい剣ですね。参考になりました。」
店兄さんは「ちぇっ買わねえのかよ」とぼやいているが、ふと騎士姉さんの様子に気が付いたようだ。
騎士姉さんが剣に見惚れている。
それほど(見た目には)美しい剣だ。
「そこのきれいなお姉さん。この剣、白金貨2枚の所、白金貨1枚にまけとくヨ。買って行くかい?」
今のレートじゃ1白金貨=12金貨。円換算で10万円位かな? 剣相場として安いのか高いのか?
騎士姉さんの眼が泳いでるぞ、「買っちゃおうかな?やめとこうかな?でも…」
財布の中見て…
決めたようだ。って持ち歩いているのか?白金貨。
「その剣!買い「姉さん!」」
姉さんの言を僕は強くさえぎった。
「姉さんは僕の守中でしょ。買い物してる暇はないはず。早く次の場所へ連れてってください。」
僕の言葉に逆らえるはずもなく、その場を離れた。
騎士姉さんはしょんぼりしている。
ここらで種明かしをしようか。
僕はそっと、騎士姉さんに耳打ちをした。
「あの剣。刀身は素晴らしいのですが、鍔元に亀裂が見えました。あれは数回打ち込めば折れちゃう剣だよ。」
騎士姉さんは「ありがと」とほっぺにキスしてくれた。ラッキー!
他の武器、鎧については中世ヨーロッパのイメージそのものだ。
ファンタジー系によくある、「鉄杭の飛び出す巨大盾」や「100tの破城槌」は見当たらなかった。
弓はあったが、短弓で単一素材。
ボウガンや合成弓はないようだ。
と、ふと思う。
当家って騎士団抱えてたよね。
武器なら騎士団の物、見せてもらえば良かんたんじゃね?




