3話 ---人鶏漫才---
ここは、……獣臭い
当たり前か、家畜が生きたまま、所狭しと並んでいる。
『俺』の世界と多少の違いはあれども、豚、羊、牛 と認識できる動物たちだ。
いろんな動物を見てハルは「あれは何?それは何?」と騎士姉さんに聞いている。
しかし
鶏…と呼んでいいものだろうか?
中型犬位の大きさだが、鶏…だよね?
おっ? 鶏売りの口上が始まったぞ。
「さぁさ!この鶏。うちで育てた特別品種だ。」
鶏売りの兄さんの隣には、[ふんす!]とふんぞり返った雄鶏。
「他のと訳が違うよ。なんたって従順でおとなしいと来たもん…」
口上を言い終わる前に雄鶏がドロップキックをかましてきた。
ずっこける鶏売り兄さん。
「どこが従順だよー!」
「狂暴じゃねーか」
「兄さん、この売り場で吹っ掛けちゃいけねーぜ」
周りのオッサンからヤジが飛ぶ中、兄さんは起き上がり雄鶏に耳打ちしてきた。
「頼むよ~。打ち合わせ通りにおとなしくしてくれなきゃ。」
耳打ちなのに丸聞こえだ。
今度は雄鶏が耳打ち(の恰好)をする。
「なになに?『もっと給料上げろ、上げてくれんお前に従う気はない』だって?」
雄鶏は、ウンウンうなずく。
「解った解った。とりあえずは、かわいい雌鶏がいっぱいいる店に連れっててあげるから、今回はこれで勘弁してくれ。」
雄鶏はあの翼で起用にサムズアップをした。
元の立ち位置に戻って何事もなかったのように仕切り直した。
「なんたって従順でおとなしいと来たもんだ。今なら雄1羽に雌9羽のセットに台車付きで金貨5枚だ。10セットしかないから早い者勝ちだよ。」
大爆笑の中
「ガハハハッ!気に入った! 2セットもらおう。」
「兄さん、1セットくれ。」
と、どんどん売れてゆく。
おひねりも飛び交う中、そのおひねりは雄鶏が素早く回収してゆく。
「大道芸だけで食っていけるんじゃね?」
皆の気持ちを代弁したヤジを起点に、さらなる爆笑に包まれた。




