5話 ---演劇改革---
観劇が終わった後、別室に案内される。
会議室の様だ。
父が上座に座り、僕はその隣に座る。
義母とハルは、別テーブルでお茶を始めた。
ノックの後、騎士が入ってくる。
「旦那様。ブローディア様、キャスフィールド様がお見えになられています。」
「うむ。通してよい。」
一人は男性で、一人は女性だ、名前からするとこの劇場のオーナーだろうか?
二人は入室後頭を垂れる。
「二人とも、忙しい中。呼び立てて済まぬの」
父から声をかける。
「ルーフィン公爵様。このたびは新しい演目を紹介していただきありがとうございます。」
ということは、この男性がブローディアさんか?
「まずは紹介しておこう。息子のフィロルウェインじゃ。ほれ、ご挨拶しなさい。」
「ご紹介にあずかりましたルーフィン家長男。フィロルウェイン=ルーフィンと言います。このたびは当家案の『侍従の鏡』を上演していただきありがとうございます。」
二人とも、三歳児らしからぬ言動にあっけにとられている。
…
…
「…当劇場のオーナーの一人。ブロード=ブローディアと申します。」
「同オーナーのキャスリン=キャスフィールドです。」
やはりだ。二人の名前を合わせて劇場名としていた。
「二人を呼んだのはほかでもない。息子が劇を、もっと面白くする案を持っていてな。それを聞かせようと思ったのだ。」
二人は怪訝そうな顔をしている。
当たり前だ、三歳児にどれだけの事が言えるのか。と
「今日の『侍従の鏡』も息子の発案じゃ。」
二人は驚いて僕を見ている。
さてと、席についてもらいお話しましょうか。
『舞』の説明に対しては、色布を借りて自分で表現してみた。
キャスフィールド女史が食いついた。
いろんな質問や意見を交わしていった。
〈殺陣〉の説明にはハルにも手伝ってもらった。
丸めた羊皮紙をハルに投げる。
「ハル。『二人騎士』のあのシーン。演るぞ。」
「ヒロにぃ。おーけー」
ハルとは寸劇ゴッコ(戦闘シーンに限る)もやっていて、専属達の忌憚ない意見により、様になっていると思う。
主が戦争を始めたために、敵同志となってしまった兄弟騎士
剣(羊皮紙)を交える。
切る。避ける。切る。避ける。
…
二人とも思い切り横なぎで首を獲る。そこで寸止め
…
「また腕を上げたな」
「にいさんこそ。なかなかおいこせないや。」
「今回も引き分けか?」
「そうだね」
…
二人は剣(羊皮紙)を収め、各陣に戻ってゆく。
「とまあ、こんな感じに演じるわけですけど。」
こっちにはブローディア氏が食いついた。
これにも質問や意見を交わす。
「ルーフィン公爵様とご子息様に、革新的な貴重なご意見がうかがえて非常に感謝いたします。」
「これらを形に出来ましたら、また当劇場へ御招待いたしますわ。」
「うむ。期待しているぞ。して、この話。息子の案と喧伝するのはやめてもらいたい。あくまでもルーフィン家から出た案としてもらいたいのだ。」
「解っております。ご子息様の聡明さは直に会ったものにしか理解できませぬ。」
「これが三歳児の意見なんて誰も信じてくれませんわ。」




