4話 ---歌劇観劇---
さてと次の演目は『女神と戦士』
女神と戦士が恋に落ちる。が、女神の役目は有望なる戦士に死を与え神の先兵として神魔戦争に送り込むことにある。
女神は恋と役目の狭間で思い悩むが、その姿を見かねて戦士は死地に赴き自らの命を散らせて逝った。
女神はその命を救い上げ、戦争に送り出す。いつか戦争が終わり、戦地から戦士が返ってくることを願って。
やっぱり、『オペラ』だった。
朗々と歌い上げる様は一つの芸術ではあるが、お子ちゃまにはつまらないものだ。
ハルが早速、うとうとし始めた。
せめて『ミュージカル』ならば変化があって楽しいだろうが。
「フィロルウェイン。何か言いたげな顔だな。」
父が問いかけてくる。
「…これはこれで、趣のある芸術ですが、もっとこう『魅せる』ものが欲しいですね。」
思ったことを口に出してみる。
「歌ではなく口語にするとか、『踊り』を加えてみるとか。」
「踊りなら舞踏会シーンがあっただろうが。」
確かに、人に化身した女神と戦士が恋に落ちるシーンは舞踏会であったけれども。
「舞踏会のダンスじゃないですよ。感情や情景を表現する『舞』の事ですよ」
ミュージカル形式の舞台を説明してゆく。
「戦闘シーンも〈殺陣〉で魅せないと」
戦闘も歌で表現されていた。
多少、剣を交えることはしたがあれではハルは納得しないだろう。
「ん?『タテ』とは何だ?」
思わず日本語で言ってしまっていた。
「〈殺陣〉とは『シナリオのある模擬戦』と言ったらいいでしょうか。演武の要素も入ってますね」
こちらも細かく説明する。
父は女騎士一人に言付けを頼んだ後に
「フィロルウェイン。今、儂と話した事を、オーナーにも話してはくれぬか?」




