7話 ---製飴交渉---
最近は、絵本以外にもカルタ(手作り)も遊びに加えてる。文ではなく名詞のみではあるが。
ハルの勉強のため普通の遊びとは異なり、絵札を見せて字札を取らせるようにしている。
「ハル。このカードの絵はな~んだ?」
「きつねだ。じゃそのカードは……これだ!」
「おしい! それは『きこり』と読むんだよ。×1ね。」
「じゃ、これだ!」
「正解! ○1だ」
最初は×の方が多く1つでも正解なら飴を1個あげてたが、最近は正解率が上がってきたので、(○数―×数)の飴をあげている。
やはり褒美があると、やる気が上がるようだ。
「やった~!きょうはあめ5コもらえたゾ~!」
「ハル。飴もいいが、後でちゃんと歯磨きしておくんだぞ。」
「う~。あれ、ちょっとやだ」
「歯が綺麗だと『かっこよく』見えるぞ。頑張れ。」
「……うん。」
『俺』のころは、日ごろの不摂生がたたって歯医者通いが多かった。
今生ではそれを直そうと、専属と一丸となって習慣づけるよう教育している。
ここには歯ブラシ文化もなかった。歯磨きと言えば、麦わらをつぶしてこするだけである。
まずは歯ブラシを作るところから始める。ブラシは家畜の毛なのは解っていたので硬さを選定。職人さんに頼むことはできた。
歯磨き粉は、貝殻をサラサラになるまで粉砕、塩や香料等と混ぜたものを使用している。
(歯磨き粉の知識なんて持ってないから雰囲気でで作ったものなんだよ~。)
歯ブラシと歯磨き粉はハルや母上、父上にも渡している。
こちらには歯医者がいない。虫歯となると抜くしかないのである。
予防は大切なのだ。
「フィロルウェインや。もうそろそろ『飴』の製法をおしえてくれぬかや?」
砂糖が希少な事もあり、飴の文化もまだなかった。砂糖を煮詰めて固めるだけのべっこう飴なのだが…製法はまだ秘密にしてある。
「義母上。これを教えてしまうと、ファルシオンへの褒美の意味がなくなります。せめて彼がカードを全部取れるままで待って下さい。それまではお茶会に必要な分、こちらで用意しますから。」
前に、義母に小瓶で渡した飴は、前回のお茶会の時に全部はけてしまった。
珍しい菓子と自慢していたら、話の流れで引くに引けなくなり、ふるまうはめになったらしい。
「ファルシオンの事を出されると何も言えぬではないか。しかたないのぉ。では5日後の茶会に間に合うよう用意してくれぬかや?」
「何家お呼びしているのですか?」
「ライベル伯爵家とレージオン侯爵家と……5家じゃが?」
「わかりました。それなりの量を用意しましょう」
卓上分だけでなく『おもたせ』分を小瓶で用意しておけば、義母の株ももっと上がるだろう。もう一工夫加えるか?
後は絵本の読み聞かせだが、最近はハルにも読ませている。
まだまだではあるが、回を追うごとにに上達しているのが解る。
『俺』の小さかった頃ってこんだけ読めたっけ?




