6話 ---絵札推当---
お茶も進み、落ち着いた頃、父は執務室に帰って行った。
本当の貴族は優雅とはかけ離れた忙しさなのだ。
「ヒロにぃ。次は何する?」
「カード当てしようか?」
こちらでもトランプに似たカードがあり絵柄は、剣、盾、槍、弓 だ。
もちろん、神経衰弱と同じ遊び方もあるが、僕はこれをESPカードに見立て、魔力訓練ゲームとした。
まずはエースカード4枚から1枚選んで場に臥せる。
そのカードの絵柄を思い浮かべながら魔力をひねり出す。
「僕の選んだカードはな~んだ?」
と言いながら魔力をハルに手渡す。
ハルは受け取った魔力を吸収しながら思案する。
…
「剣」
「ピンポーン!正解!」
「ヤッター! 次、ボクいくよ。ボクのえらんだかーどはな~んだ?」
ハルは赤い魔力を渡してくる。
…
…
流れてくるイメージは長い物。
えっと、『刺す』?
…
「槍?」
「ぴんぽーん。せいかい。」
魔力を使うには、才能ときっかけが必要となる。
僕の場合は、秘宝と医師診断時の魔力だ。
普通は、洗礼時の儀式がきっかけになり、それ以降で扱いを学んでいくのだろうが、自分も含め3歳から鍛えるとどうなるか?
このゲームは、その極秘研究の一環である。
と、このゲームを考える前に専属達と魔力の受け渡し実験をしたことがある。その受け渡し効率は
赤の他人⇒1割
属性一致⇒2割
姉妹⇒3割
もちろんサンプル数が少ないので絶対ではないと思うが。
ただ、ここに『僕⇔』『ドコデ⇔モドア』は含まれていない。
この場合はほぼ100%だった。
ドコデモドア兄弟は解るが、僕は『光』だからだろうか?
ここに兄弟の魔力パスの考えを加え魔力にイメージを付与して渡すことを考えた。
先のカードを使っての正解率は
赤の他人⇒2割強
属性一致⇒5割
姉妹⇒5割
である。
ただ、回数とともに正解率も上昇傾向にある。今現在
赤の他人⇒4割
属性一致⇒7割
姉妹⇒7割
じき100%になるか?
魔力受け渡し時に『僕の選んだカードはな~んだ?』ということで子供の遊びっぽくして、ハルに試したところ、僕⇒ハルでは9割だった。
ハルに魔力感受性があることは確認できた。
が、ハルから魔力を受け渡されることはなかった。
「ヒロにぃ。なんであてられないのぉ?」
なんか、小馬鹿にし始めたな。
いっちょシメちゃろか?とも思ったが、僕は兄である。こんなことで怒ってはいけない。
「ハル。僕はハルに当ててもらおうと思いを詰めて『僕の選んだカードはな~んだ?』って渡しているのに、ハルからのは思いが詰まってないよ。もっと思いを込めて渡してくれないとわかんないよ。」
「おもい、こめてるもん。ヒロにぃがうけとれないだけだもん…」
ちょっと自信なくなってきたのかな?
「ハル。僕が『思い』を渡したときどう感じた?」
「なんか、あたたかいものが、てからしみこんでくかんじぃ?」
「じゃ、その『温かい物』を集めなおして、僕に渡し返してくれないか?」
自分がやった丹田収束法を教え…
「ヒロにぃ。なんかあたたかいもの、でた」
いや。その言い方だと、お漏らししたように聞こえるぞ。
今ではハル⇒僕の正解率は7割だ。
3割は、イメージの混濁。
剣と槍なんて『長い物』のイメージしかない場合判断に困る。
最近やっと『切る』『刺す』のイメージが付加され始めたところだ。
もちろん 僕⇒ハル の正解率は100%にできるが、また増長するといけないので調整して7割に抑えている。
やっていることは魔力制御訓練なのだが、魔力が見えなければ、子供の遊びにしか見えない。
「バーバラーヤや。あれは何をしているのかや?」
「アマリアーヌ様。『カード当て』という遊びにございます。」
「で、どちらが勝っているのかや?」
「この遊びはお互いの思いをくみ取る遊びにございます。そこに勝ち負けはございません。」
「勝ち負けの無い遊びとは面妖な。しかし、見ているとなごむのぉ。」
「御意にございます」




