5話 ---父子交渉---
「フィロルウェイン。」
「何でしょう、父上?」
「さっきの演目、儂に譲ってくれぬか?」
「どういった事でしょう?」
「公務で演劇を見る機会があるのだが、最近マンネリ化していての、面白くないのだ。しかしさっきの演目。理屈を知らぬ者には驚きを。理屈を知ってる者には笑いを与える、全く新しいものだ。これを当家の銘入りで広めたいのだ。」
新しい物だったか。大道芸あたりでやられてそうな題目と思ったが、いかんせん。まだ僕はこの屋敷から出たことがないのだ。
「父上。僕はまだ、この屋敷から出たことがありません。先ほどの『面白くない演劇』や街を見に行くこと。これをお譲りする条件とします。」
「ヒロにぃずる~い。ハルもみにいきたいゾ。」
「あっ訂正です。ファルシオンと一緒に見に行くこと。これを条件とします。」
父は渋い顔をする。
一般的に貴族子女は、洗礼を受けるまで屋敷から出ることはない。規則で決められているわけではないが、主に防犯上の理由であろう。
ここで、ハルとアイコンタクト。目を潤ませてダブル『どうするアイ○ル作戦』発動。
「あ~~解った。その条件を飲もう。」
「「ヤッター!」」
「ただし!」
[[ビクッ]]
「儂と護衛付きだ。文句は言わさん。」
まぁ、当たり前か。
「妾は異議ありますわ。」
おやおや、義母からとんだ横槍が。やはり息子を街へ連れ出すなど危険を感じているのか?
「妾も連れてってくださいましな。」
ただ付いて来たいだけだった。
なんか大げさなことになりそう。




