2話 ---大量甘藍---
明日はハルの誕生日だ。
今回はシュークリームを使ったあれを作ろう。
「今回は多量のシュークリームを作ります。皆さん手伝ってください。」
「「「「「「「「「「はい、ヒロ様」」」」」」」」」」
専属も随分増えたものだ。
「カスタードクリームは、ガーリィとセレスに任せます。ほかの皆はシュー生地をお願いします。」
前に作っているので分量比率は割愛する。
ただし色付けのため抹茶を少量足しておく。
今回作る量は…
まず土台だが、底面直径40cm、辺を60cmの円錐を想定する。
直径40の円の外周は3.14掛けで…約130としよう。シューの直径を5とすると26個必要、と。
これを辺60の円錐に積み上げるとなると12段。26個が12段目で0個になるには…いや単純に26×12÷2で計算できる。
外周を覆うだけで概算156個のシュークリームが必要となる。
ただ土台に張り付けるだけでは隙間が見苦しい。張り付けるのを2層としよう。
そうなると土台は、底面直径30cm、辺を45cmの円錐となり…
一から計算するのは面倒だ。先ほどの156×¾×¾≒88
計244個。失敗する数も考えて300個としておこう。
「生地ができたらこの絞り袋に入れていってください。」
今ではケーキ作りに絞り袋が使えるようになっている。
ビニールがないので目の細かい布に柿渋を浸み込ませ乾かしたものだ。
ブガの実の柿渋は、防腐、防水性が増すため、漁網などに使われている。
ただ柿渋は乾くと固くなるので布に使うとしなやかさが失われてしまうのだ。
そこで、試しにセブカの実で柿渋を作り使ってみた所、それほどしなやかさは損なわれなかったのだ。
現在はセンフィン家の元で、今までよりしなやかな防水布の販売計画中だ。
「次に天板に生地を絞り出してください。できた天板は仮想窯に入れてください。」
仮想窯。実際は棚状に天板が置けるようにレールの付いたフレームだ。
1枚の天板には 5×6 計30個。仮想窯には5枚天板が乗るので計150個できる事になる。
「ラーヤ、イリス。仮想窯全体に『シスト』をお願いします。」
生地の表目にまんべんなく水の膜が付く。
「デル。仮想窯に『IR結界』を」
デルも光に関しては一定の操作ができるようになっている。
仮想窯内を加熱した際の、輻射熱を抑える結界を張ってもらった。
「ではいきますよ『ヒート』」
僕の魔法でゆっくり膨らんでゆくシュー生地。
約15分でシューが焼けた。
カスタードクリームはすでに絞り袋に待機済みだ。
「出来たシューにクリームを注入していってください。こちらは2回目を焼きますよ」
あっ、というまではないが、比較的早く300個のシュークリームが用意できた。




