4話 ---散策結果---
「今日、市を回ってみてどうでした。ヨル兄?」
打ち合わせ後。会議室で休ませてもらっている。
「義父上が言っていたことがよくわかりました。ドゥーブル家に来てから領地経営について学ばせてもらいましたが、やはり市井に出ないと本当のいみで『わかった』事にはなりませんね。」
「今日は月初めの大市でしたけど、週初めの中市と普段の市、それぞれ違った顔を見せます。また機会を見つけて繰り出しましょう。」
「はい、ヒロ様…」
今回提案した劇の資料を見てから何か言いたそうな顔をしているが…
「どうしたんです、ヨル兄?」
「ヒロ様…いえ、フィロルウェイン様。劇の件、ありがとうございます。」
「ん?何のことですか?」
「悪役貴族を単なる悪人ではなく、忠義を貫いたものとしてくださったではないですか。父と私をおもんばかっての事でしょう。」
やはりそれを気にしていたのか。
「いいえ。僕としてはこう設定した方が面白いと思ったからしたまでの事です。」
悪人でも信念を貫く者、義の者、とかは人気があるでしょう。(教授とか三代目とか宇宙海賊とか)
とはいえヨル兄のいう事もあながち間違ってはいない。
死人(いや、死んではいないが)に鞭打つ真似はしたくないのだ。
「あくまでもこれはフィクションです。ちゃん冒頭に『この物語はフィクションであり現実の人物、団体とは一切関係ありません』とナレーション入れさせますよ。」
王子の名前を『ルル』、4つの大騎士団、としておきながらフィクションも何もないんだが。
一応、ルル兄には直接、各公爵家騎士団にはお姉さまを通してこの物語の許可は取り付けてはある。
「劇の公演にはカレルお姉さま達をお誘いするつもりです。その時に一緒に見ましょう。」
「わかりました、ヒロ様」




