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2話 ---儒艮魔肉---
「さぁさ御立合い。今日売りに出すのはケルピーの肉だよ。」
いつもの魔肉屋にやってきた。
『ケルビー』といえば『水棲馬』だが今回の動物は?
「おっちゃん。ケルビーってどんな魔物なの?」
「おっと、坊ちゃん。よくぞ聞いてくれました。ケルビーっていうのは河口付近に住む鰭をもった20シャックンほどの魔物さ。鰭は持っていても鱗がなくって時々水面に息継ぎする不思議な生き物でね。あっ、魔物って言っても藻を食ってる人を襲わないおとなしいやつだよ。」
なんかジュゴンみたいな動物だな。
「そんなにおとなしかったら簡単に討伐されちゃわないの?」
「そこはね、こいつらが住んでる河口の領主様が、その河口をこいつらの牧場にして保護してるんだよ。こうやって出回るのはそこで頭数調整された分さ。」
ちゃんと保護されていれば絶滅の心配はないな。
「本来なら上位貴族様に卸されるところなんだが、偶然にも手に入ったんだよ。ちょっとお高いがなかなか手に入らない一品さ。冬場なんで、生肉での販売だよ。」
「おっちゃん、二塊ちょうだい。」
「毎度!」




