1話 ---二月月市---
「「おばちゃん久しぶり。」」
「おや、来たね。ヒロ君ハル君。…とそっちの子は?」
「紹介するよ。新しく友達になったヨル兄だよ。こちらはいつも市でお世話になっている。キャルフおばちゃんだよ。」
「初めておめにかかります。キャルフ夫人。わたくしヨルークともうします。」
「なんとも礼儀正しい子だね。ヒロ君の友達って事はあんたもお貴族様なんでしょ。丁寧なしゃべり方できないで済まないねぇ。」
「いえ、お気になされず。」
「それと『夫人』なんてがらじゃないんでねぇ。『おばちゃん』でいいんだよ。」
「では『おばさま』とよばせて下さい。」
「!…まぁ…そんなところかねぇ」
2月月市にヨル兄を連れ出したのだった。
「おばちゃん。ジャータは?」
「ジャータは村を出る前に風邪をひいちまってね。今回は村で留守番だよ。」
「えっ大丈夫なんですか?」
この時代、風邪といっても馬鹿にできないものがある。
ほとんどの集落では医者がいないのだ。
「大丈夫だよ。家の周りにはキャルフだけじゃなくていろんな薬草を植えてあるからね」
さらに民間療法も馬鹿にできない。
この露店で売っている商品は村の野菜だけじゃなく、薬草も取り扱っている。
時には症状を聞き、その症状にあった薬草を売っているのだ。
ちゃんと効能を考えての、薬研で調合する姿は和漢の薬師だ。
どんな集落にも一人は、こういった薬師的な人がいるとのことだ。
「熱が出たときにはこのアローアの葉を切っておでこにはっときゃいいしね。」
取り出されたのはアロエの鉢植えだ。
なるほど。これは天然の冷えピタシートだ。




