1話 ---子爵心情---
妻に同行し、ルーフィン家を訪れた所、私だけ、お茶会ではなく応接室に案内された。
そこには、ルーフィン公が待っておられた。
「ルーフィン閣下。当家の提案から大事になってしまい申し訳ありません。」
妻がルーフィン夫人に相談したところ、他公爵家でも同様の相談があったそうで。それが王妃様のお耳に入り……結局、『年頃子息お披露目お茶会』が全貴族規模になってしまったのだ。
「いえいえ。妻が喜んでましたよ。『新しい試み』だと。」
本当にルーフィン公には頭が下がる思いだ。
「それにここは私的な場。『閣下』はよして『リアス』と呼んでください。確かドゥーブル卿のファーストネームは『ライフール』でしたね。でしたら呼び名は『ライル』?ですかな。」
「はっ、はい。それでかまいません。」
いきなりの愛称呼びの提案。に戸惑いは隠せません。
「改めてライル殿。子爵への陞爵。おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます。しかしながら私自身の功績ではない事での陞爵。身に余る事でございます。」
確かに、賜わった土地も含めると『男爵』では不釣り合いであるが。
「陛下はヨルーク殿の処遇についても考えられてたのでしょう。いくらタブーとされていても、要らぬ悪評は付いて回るもの。位が上がればそういった悪評を言うものは減りますからね。」
「そういった意図もあったとは…」
低位貴族だとなかなか気が付かない事だ。
「で、ヨルーク殿を引き取ってみてどうですかな?」
「はい、連れて帰り早速、妻と娘に気に入られまして、甘やされている状態です。私としては彼の素養を育てるべく厳しくしたいものなのですが。」
そうなのだ。
彼にはちゃんとした教育を受けさせ立派な一貴族としてやっていける力を身に着けさせようと思っている。
後継ぎにするにしろ、独立させるにしろ、一人前にするのが私の役目だ。
だが、妻や娘がなかなか彼を離してはくれない。
「お互い、子供に関しては妻には頭が上がらないようですな。」
「いえいえ。かっ…リアス殿はご子息を立派に育てられているではないですか。」
妻や娘の話から子息御兄弟の聡明さはうかがえるし、特にフィロルウェイン殿からは、洗礼前なれど貴族としての風格が備わっておられる。
これも公の教育の賜物でしょう。
「実を言いますと、私は子供の教育に口は出していないのですよ。フィロルウェインには専属侍女が、ファルシオンにはアマリアーヌが付きっ切りでしたのでね。」
「ではフィロルウェイン殿の文武はその侍女が?」
「いえ、フィロルウェインは知りたい事があると関連している本を要求してきますし、剣においても自ら教えを乞うた結果ですよ。ファルシオンはそれに刺激され学んでいる次第なんですよ。」
フィロルウェイン殿の聡明さは生まれながらのモノ?
すごい方とは思ってはいましたが…いや、それがルーフィン家の血筋というものでしょう。




