4話 ---令嬢談話---
「「「「「カレルちゃん、陞爵おめでとう」」」」」
「みんな、ありがとう。」
「で、陞爵して何か変化はあったの?」
「う~ん。最近お父様の仕事が忙しくなったようなの。執務室にいる時間が長くなったし、外に出ても帰りが遅いし。」
「そりゃあね、領地が増えたんだし、忙しくなるのはあたりまえよ。」
「そうそう。」
「でもそれって最初だけだと思うよ。うちのお父様も、新事業立ち上げには忙しくしてるけど、それが終わったらのんびりしてるもの。」
「そんなものなのかな?」
「それよりさ、義弟ができたんだって?」
「うん、ヨルーク君っていうんだ。かわいいし、賢いよ。」
「賢いってヒロ様並み?」
「そうねぇ、知識は年相応だけども、礼儀作法はヒロ様並みってところかな。」
「それってすごい事じゃない。」
「うんうん。もしかしてさ、将来、カレルちゃんのお婿さん候補?」
「そんなことないよ。ヨルーク君が成人を迎えるころは私たちおばさんだよ。」
「そーなのよね。そうなる前に今日のお茶会で、何らかの縁を持とうと思たのに…あれじゃ~ね~。」
「たしかにね。あんなあからさまに声をかけられてもね。」
「話題もなんかありきたりよね。」
「自分の武勇伝なんて誰も聞いてないっちゅうの。」
「あそこでルゼちゃんがルーシフェル殿下連れてきてくれなかったら…地獄だったわ。」
「同じ武勇伝ならフィロルウェイン様やファルシオン様のお話の方がいいわね。」
「そうそう。ファルシオン様の自慢話は年相応で和むわぁ。」
「逆にフィロルウェイン様は、まるで劇の語りの様で、思わず話に引きずりこまれるようで。」
「うんうん。それにさ、たまに劇の草案を話してくれたりしてね。」
「クライマックスシーンはファルシオン様と剣舞で表現してくれるしね。」
「そうそう。最後にはさ『続きは劇場で』なんて締めくくるから見に行きたくなるじゃん。」
「武勇伝といえばさぁ、ルーシフェル殿下の大捕り物。ルゼちゃん。殿下から何か聞いていない?」
「……詳しい内容は特には…」
「その歯切れの悪さ…何か聞いていると見た。」
「え、何々?」
「教えて。教えて。」
「言えません。で…殿下には口止めされている事なので。」
「「「「「…それ以上は聞けないわね。」」」」」
「で、でも事の顛末はフィロルウェイン様が劇にされるそうですよ。」
「えっほんとに?」
「『今は関係者に聞き取り、資料を纏めているのでいつになるかわかりませんが』と言っておられました。」
「わぁ観たいなぁ」
「でもねぇ」
「観に行くとなると家族ででしょ。」
「行く余裕がないわ。」
「それについては『一般席ならご招待しますよ』って。」
「そうかぁ。町娘に変装すれば一般席でも問題ないわね。」
「でも一般席って危険じゃない?」
「そこはフィロルウェイン様の事よ。陰ながらの護衛を用意してくださるはずよ。」
「そーよねー。」
「…」
「どうしたの?」
「もしかしてさ。私たちって殿方の基準をルーシフェル殿下やフィロルウェイン様に置いてない?」
「……ありうる。」
「殿下はいいわよ。王子様なんだし雲の上の存在よ。いえ、フィロルウェイン様も公爵家なんだから位としても上位よ。でもねぇ。」
「そこを差っ引いてみても、今日集まった殿方と比べると…」
「フィロルウェイン様だけでなくファルシオン様やエイルーシェル様。さらにヨルーク様も加えると…」
「…あそこで集まってる殿方を『殿方』として見れませんね…」
ちなみにほとんどの成人男子は来ていません。
みんな軍役や騎士役中なのでお茶会が理由では休みが取れません。




