4話 ---子息沙汰---
「してドゥーブル卿よ。其方の所には男児はおらなかったの。」
「はい、ゆくゆくは婿養子を迎えようかと思っております。」
まだまだ娘の結婚話は早いと思うのだが、それでも貴族というもの、後継ぎは考えておかねばならぬモノ。
「そこでじゃ、其方の所にこのヨルークを預けてみようと思っとるんじゃがどうであろう?」
「『預ける』とは?」
ここでアクダイ候の子息の話とはどういう事であろうか?
「従者として教育するもよし。養子として受け入れるもよし。じゃ。養子にしたとて嫡男として育てよとは言わぬ。単に『男児』を育てて見ぬか、という事よ。」
そういう意図でしたか。
「ならば養子として迎えたく思います。」
「即決じゃのう。よいのか。」
「ヨルーク殿を私に預ける事は陛下の恩情にございます。その恩情を受け入れない事は臣下にはありえませぬ。しかしながら従者として受け入れれば、いつまでも『アクダイ』の悪名がついて回ることになりましょう。それよりは我が息子として受け入れようと思った次第であります。」
「其方に話を振って正解じゃった様じゃの。ヨルークよ、ドゥーブル卿はこういって居るがどうじゃな。」
「へいか。わたくしにいぞんはございません。」
「ということじゃ。ドゥーブル卿、頼むぞ。」
「御意に。」
「これにてすべての沙汰が下った。これにて裁判は終了するものとする。」




