13話 ---見習帰還---
「ヒロ様~!」
門を出ようとしたところで、デルが走って帰ってきた。
「デル、どうしたんです?君には迎えに行くと伝えてたはずですが。」
「ヒロ様!エチゴヤが捕まったというのは聞きましたがそこに勤めている者たちはどうなったか御知りでしょうか?」
どうしたんだろう?エチゴヤに縁者でも勤めていたのかな。
「どうしたんです?」
「実は知り合いが昨日より、そのエチゴヤに奉公に行ってまして。そして今朝、弁師の話でエチゴヤの件は知ったのですが、その知り合いの消息までは分からなくて…」
エチゴヤまでは行ったが、その知り合いの安否が分からなかった様だな。
そういえば何人か家で保護している報告を受けていたっけ。
名簿はあったと思うから、名前が判れば照合できると思うけど。
「知り合いの名前は何と言うのです?」
「ガッキといいます。」
「ガッキだって?」
ネプト兄さんが話に割り込んできた。
「ネプト兄さん、知ってるの?」
「知ってるも何も、私が保護した少年だよ。連絡先が判らずにウチに収容したんで、今は騎士団の医務室で眠っているはずだよ。」
「よかった~。」
今回の件で身代わりとして雇われた者たちは皆、素性のはっきりしていない者ばかりで、商家の雇い入れ名簿にも載っていなかった。
かろうじてネプト兄さんたち潜入組が、聞いた名前が頼りで、大半は連絡先が分からず、睡眠薬からの覚醒待ちの状態であった。
「デル。これから騎士団医務室へ行ってガッキ君の家族への連絡先をそこにいる騎士に伝えなさい。他、収容された者に知り合いがいればその連絡先も伝えるように。後はガッキ君の目が覚めるまで傍に付いていてあげなさい。」
「あ、ありがとうございます。ヒロ様。」
デルを迎えに行く予定はなくなったが、それは市散策の問題にはならない。
「ネプト兄さん。行きましょうか。」




