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12話 ---弁師心情---
「弁師さん!エチゴヤが捕まったって本当ですか?」
近くを通りかっかた少年が俺に詰め寄ってきた。
「おう坊主。こちとらお国から依頼を受けた『弁師』だぜ。俺っちが嘘言うわけないだろ。」
多少脚色はするがな。
『嘘』じゃねーよ。『脚色』だよ。『脚色』!
「じゃ、じゃあ、そこで働いてた者たちは?」
「そりゃ、屋敷に残された者もいれば、付いていった者もいるだろうぜ。そこんとこまでは聞かされてないんでね。」
この事は俺の憶測であって、弁師としての話には加えてない事だ。
聞いていないことは、憶測を加えちゃなんねぇ。それが『弁師』としての矜持だ。
「そうですか…」
「そこに知り合いが勤めてたのかい?」
「…ええ。」
「気落ちすることはねえよ。さっきも言ったろ『そこで働いてた者たちに罪はねーんだ』ってな。取り調べ受けた後に何のお咎めなく戻ってくるって。」
「はい…僕、探しに行ってみます。ありがとうございました。」
そういうと少年はエチゴヤのある方へ走っていった。
知り合い、見つかるといいな。少年。




