4話 ---将軍報告---
まだルルからの報告まで時間がある。
今のうちに仮眠をとっておくかのう。
うむ!何者かの気配。
「何奴!」
「儂じゃよ。」
「っ、大将!どうやって取次もなしにここに入って来れたのだ。」
ルルからの伝令は無条件に儂に取り次ぐようにはしていたが、それでも『取次』というものは存在する。
「至急、計画の変更があったでの。報告のため忍び込ませてもらったんじゃよ。」
う~む。こう易々と忍び込ませてしまうとはの。警備の見直しが必要か。
「なに、こんなことができるのは儂…と、ヒロぐらいなものじゃて。と、雑談はこれくらいにして…
…
陛下。アクダイ侯爵、およびその庇護下の商家がガルト帝国への亡命を企てておりました。」
「ほう、アクダイが亡命をな。」
「はい、逃走を図る計画であったそうです。逃走後は屋敷に火を放ち、身代わりの焼死体を持って死んだことにする予定だったようです。現在各騎士団は、ルーシフェル殿下指揮の元、放火阻止と捕縛に動く予定となっています。」
「うむ、的確な判断じゃ。しかし東のガルト帝国への亡命とはの。放火も、かの国の指示かの?」
「そこは明言されておりません。ただ『王都の混乱』を示唆されておりました。今回の亡命に対し、子爵待遇で迎えるということを聞いております。」
「まぁ、こちらで爵位剥奪の上、牢屋入り。よりは爵位が下がったとしても貴族でいられる方がましと考えたのじゃろう。しかしその話、眉唾ものだの。あの皇帝の気性だと財産没収の上ポイッ!ではないかの?」
「御意に」
「なんにせよ、事が起きる前で良かった。もしやこちらの計画が漏れていたのではあるまいな。」
「粛清計画があることは知っていた様ですが時期までは把握していなかった様子。あちらも『まさか新年早々に』と思って計画していたものと思われます。」
「考えることは同じということか。ライヤーン卿、報告ご苦労であった。」
そうなるとルルからの報告も早いかの。
「陛下、ここにヒロが持たせてくれた茶菓子があるんじゃが。」
「大将、それはいいものを持っておるな。それをつまみながらルルからの報告を待とうかの。」




