2話 ---侍女嗜み---
「…という次第にございます。ヒロ様。」
ルル兄が何を隠しているか調べてもらおうとラーヤに言ったら、ラーヤはすでに知っていた。
「よくそんな極秘任務、ラーヤは知っていたね。」
「侍女の嗜みにございます。」
イヤ、そんな嗜みなんてないです。
「なるほど、言ってみればこれがルル兄の成人初任務なわけだ。」
「しかしながら、このまま進めてしまいますと、今回のルル殿下の御任務は失敗に終わります。」
「どういうこと?」
「粛清を懸念してアクダイ侯爵が他国へっ亡命するとの事です。
主だった財はすでに郊外へ移動済み。今夜半前に主だった家人が出た後、屋敷に火を放ち証拠を消すとの事です。商家の方も同様の計画がなされております。」
「それは大変だ。すぐルル兄に知らせないと。」
ただの小火ならともかく証拠隠滅なら大火だ。下手すれば王都が火の海になる。
まあ、そのドタバタで逃げるつもりなんだろうけど。
「それには及びません。すでにオルソン様配下の隠密部隊が、侯爵家、並びに商家へ潜入中にございます。連絡あり次第ルル殿下は対策を取られるものと思われます。」
「それはよかった。でもなんでそんな事までラーヤは知ってるの?」
「侍女の嗜みにございます。」
「…」




