1話 ---殿下暗躍---
丁度、皆の注目が試合に行ったな。まず騎士団長を招集だ。
我は各騎士団長に目配せをし天幕の裏手へ向かう。
側近が段取りどおりに火鉢を用意してくれておるな。
騎士団長らは各々の方向から気配を消して集まってきた。
「皆、集まったな。これが今回の指令書である。この指令書はこの後、焼却処分するものである。その意味は…解るな。」
「「「「はいっ!殿下!」」」」
それぞれに指令書を手渡ししてゆく。
…
何度か読み返すものもいれば、1ページずつ熟読するものもおるな。
…
頃合いか。
「各騎士団長!今回は極秘任務である。指令書の内容は各々、頭に叩き込んだな。」
「「「「はいっ!殿下!」」」」
「ならば指令書は火鉢にくべよ。」
「「「「ハハッ!」」」」
今回、父上が我に託した任務というのがアクダイ侯爵家の粛清計画である。
禁制品の密輸を庇護にしている商家にさせ、賄賂で地位を上げようとする王国貴族にあるまじき行為。
その粛清を我の手柄にするように父上は託してくれたのだ。
侯爵家には我とルーフィン家騎士団が。
庇護下の商家には、他の騎士団が赴くようになっている。
本来なら王家騎士団を使う所であろうが、今回の任務に貴族子弟のいる王家騎士団は使えぬ。
どこから情報が漏洩するかわからぬからな。
王家に忠誠を誓ってるとはいえ、各家との縁は切れておらぬのだ。
その点、公爵家騎士団はいずれも各家古参の騎士家が継承していてその忠誠心は測りしれぬものがある。
うむ、
忠誠心の点で王家は負けておるぞ。
そもそも成り立ちが違うのだ。
そこは致し方ないであろう。
「殿下。もうそろそろお戻りになりませぬとヒロに感づかれてしまいますぞ。」
「そうであるな。戻るとしよう。無敗将軍、今夜は頼むぞ。」
「御意に。」




