4話 ---母再就職---
「バーバラーヤ様。デルートを雇って下さりありがとうございます。」
息子がフィロルウェイン様に召し抱えられたのは知っていましたので、バーバラーヤ様の指導を受けていることは想像できましたが、まさかそのバーバラーヤ様がここに来られるなんて…
「いいえ、デルートを見い出したのはフィロルウェイン様です。それにデルートのあの才は貴女の教育の賜物でしょう。立派に育てられましたね。」
「もったいなきお言葉です。」
息子には一通りの教育を施してきたつもりでしたが、バーバラーヤ様の前では、至らなかった所がなかったか不安になります。
「私からは教えることがなかったので、侍従の補佐として実務を勉強させていましたが、今では立派にフィロルウェイン様専属の一員ですよ。」
バーバラーヤ様に認められるなど、なんと有り難き事でしょう。
「そこで、レノバ。貴女、侍女として再び働いてみるつもりはありませんか?」
「有り難きお話ですが、よろしいのでしょうか。侍女をやめて十数年。かなりのブランクがありますが。」
「デルートを見れば今の貴女の手腕はわかります。それに、私が十数年やそこいらで忘れてしまえる様な技術を教えたつもりはありませんよ。」
脳裏にはあの地獄教育の日々が…
「はは…はい。」
思い出すと身震いしてしまいます。
「貴女は縫物が特に上手でしたね。貴女には屋敷の繕い物や侍女・侍従教育を中心に任せたいと思いますが、どうですか?」
「…はい、そのお話、謹んで受けさせていただきます。」
「ラーヤ。お話、終わった?」
フィロルウェイン様が戻ってこられました。
「はい、ヒロ様。無事承諾いただきました。」
「では正式に。 ルーフィン公爵家が長男フィロルウェイン=ルーフィンの責任において、レノバ=ギリッシュを侍女として当家に召し抱えるものとする。よろしいかな。」
「はい、よろしくお願いします。」
どうやらすでにフィロルウェイン様には話を通してられたようです。
「それでは僕らは帰ります。」
「そんな!フィロルウェイン様方を玄関でお見送りするなど…」
とはいえ、こんなみすぼらしい部屋に上がっていただくのも失礼に当たりますが…
「僕らはお忍びで出てきているんです。ここで結構。では、よいお年を。」
渋々、フィロルウェイン様方をお見送りするしかありませんでした。
侍女たちの教育係をゲットできました。
レノバほどの者なら私の代わりを任せられますね。
その分、ヒロ様に尽くす時間が増やせるというものです。




