2話 ---下町長屋---
久しぶりに家に帰ってきた。
母さん元気にしているだろうか。
「母さん、ただいま戻りました。」
「お帰りなさい。デルート。ん?後ろの方は…ヴィナス様!騎士様に送っていただくなど恐れ多い」
騎士ヴィナス様は平民服なので雰囲気は違いますが顔を覚えられていました。
「いえ母君。これもフィロルウェイン様から与えられた任務ですのでお気になさらず。」
「使用人の帰宅に騎士様を遣われる主がございましょうか?」
[ここにいますよ~]
後ろに控えられてる、ヒロ様の心話が聞こえます。
母さんは、ヒロ様本人もここに来ているのですがまだ気が付いていない様子です。
それよりも先に、さらに後ろのラーヤ様に気が付いたようです。
「っ!バーバラーヤ様!」
「息災の様ですね、レノバ。」
ラーヤ様から聞いてはいましたが、母さんはラーヤ様の教え子だったというのは本当だったようです。
「そっそんな!バーバラーヤ様がこんなところに来られるなんて…」
動揺している母さんの姿なんて初めて見ました。
そしてラーヤ様の影からヒロ様はひょっこり顔をのぞかせ、
「デルの母君はラーヤの教え子なんですね。つもる話もあるでしょう。僕らは先に長屋の皆にお土産を配ってきますから、ゆっくり話をしていなさい。ヴィナ兄さん、デル、行きましょう。」
「ありがとうございます。ヒロ様。」
「えっえっえ?ヒ…ヒロ様? ってもしかしてフィロルウェイン…様。そ…そんな…主様に送っていただくなど…」
母さんはさらに動揺していた。




