13話 ---野獣精肉---
猪や熊は止めを刺されたら、即座に川まで運ばれ、血抜き、内蔵抜きされ、川に沈められる。
内蔵に巣くう寄生虫や病原体を排除し、熱による肉の劣化を抑えるためだ。
半分は今日の宴に使用され、後の半分は熟成、干し肉、燻製に回される。
「御爺様。宴に固い肉をそのまま使用されるのですか?」
固い筋張った肉は食べたくないぞ。
「フィロルウェインは良く知っておるの。左様。捕れたばかりの肉は柔らかくないし、野獣なので筋張っておる。しかしの、今回出張ってくれた騎士や領民たちが、このような多量の肉を前にして黙っておると思うか?」
領民はともかく騎士達は総じて肉食系が多い。
(みんな、野菜もたべようよ。)
「無理ですね。暴動が起きます。」
「そうであろう。それに多少固かろうとこれはこれでうまい物じゃよ。」
そうは言ってもなぁ~
「…御爺様。少々肉を分けてもらえませんか?」
「ヒロ兄、何かつくるの?」
「そのままだと僕らには噛み切れそうにないからね。食べやすくしようと思って。」
「ああ、あれだね。」
「あれだけじゃないよ。もう一つ考えていることがあるんだよ。」
「えっ、どうするの?」
「…聞いていると、固い肉を柔らかく食べる方法がある様じゃの。解った、その加工肉を儂にもふるまう事。それであれば好きなだけ持って行け。」
「ありがとうございます。御爺様」




