6話 ---南京甘味---
夕食時のデザートはガボンプリンだ。
こちらに着いて早々に作らせたのだ。
「ほほう、ガボンでプリンがつくれるとはのう。確かにガボンは甘い野菜ではあるが、この様に甘味になるとは思いもよらなんだ。」
「ロズ御爺様。実を言うともっと甘いガボンを使いたかったのですが…」
「なに!もっと甘いガボンがあるのか!」
こっちでのかぼちゃ栽培は、基本、『ほったらかし』だ。
土手でかってに生え。その実を収穫する。
「公爵領で育ったガボンはこの倍は甘いです。」
ちゃんと苗から育て、しっかり肥料をあげた場所に植え付ける。
勿論、しっかり畑を耕しておき、刈った草を敷き詰め防草もしておく。
摘芯して枝分かれもさせるので収穫量も倍以上だ。
多分、海藻肥料が一番効いているんじゃないかな。
ここらで用意できそうなものは…
馬糞堆肥と生ごみ堆肥くらいか。
「ロズ御爺様。領で行っているガボンの栽培方法をレポートにまとめておきますので、試してみてもらえませんか?」
「それで、甘いガボンが採れるのか?」
「土や気候に違いがあるので確約はできません。ですが何らかの変化はあるはずです。」
「…それは…公爵家の『秘匿情報』ではないのかな? その方法が使えるのはガボンだけでは無かろう。」
「確かにそうですが、これは僕が考えた方法ですしそれに…そうやって気遣って下さるロズ御爺様の事です。外に漏らされる事はないのでしょう。」
「それはそうじゃが、貴族というもの、タダというわけにもいかぬ。」
『レシピ』はOKで『栽培技術』は問題があるという。
秘匿できるかできないかという問題だろうか?
確かにレシピは厨房内の事なので外には漏れにくいが、栽培は外でやるものだから見られてしまう。
いや、それよりは、領政にかかわる事になるからか。
野菜の味が良くなれば、当然、買取額等が変わってくる。
それにここは王都より3日の位置だ。十分交易の範囲内だ。
「それでしたら、僕のレポートを元に、こちらで試された結果を報告していただくという事を対価としていただくのはどうでしょう。」
公爵領でも御婆様にいろいろ試してもらってはいるが、こういったものはサンプル数が多ければ多いほどいい。
土壌改良研究にロズ御爺様にも一口乗っていただこう。
「そんなことでよいのか?」
「はい。この方法はいまだ手探りの状態なので、先ほども言いましたように、土や気候の違いでどう変わるのかわからない状態です。まずは実験農地を用意して各方法での差異を確認してください。 御爺様の土地での成功例、失敗例はそれだけで十分な価値があります。」
「フム…判った。それで了承しておこうかの。」




