9話 ---既婚者悟---
僕らは昼過ぎには帰っていた。
隠密部隊は、交代でオル兄さんを『温かい目』で見守り中だ。
騎士控室にてその交代騎士さんの報告を受けていた。
どうやら二人は『いい雰囲気』らしい。
「兄さんたちは『爆発しろ』なんて思わないんですね。」
「ヒロ君、あれだけお似合いだと羨ましくは思っても嫉妬するなんて気は起きないよ。」
「そうそう、それに女っけなしだった隊長に春が来たんだ。お祝いしないと」
オル兄さんは、隊員に愛されてるなぁ。
「しかしラウト卿のあの強さ。結婚したら隊長、絶対、尻に敷かれるぞ。」
「今日のラウト卿は可憐だけど、騎士服着た毅然とした姿を知ってるからね。」
「俺は普段も可憐な子が好みだね。」
「やっぱり『嫁』っていうのは可愛くないと。」
彼女も、内面は可愛い乙女なんですけどね。
何か、えらく『嫁』に幻想抱いてない?
<ポンポン>と独身騎士の肩を叩くは既婚騎士さん達だ。
「ダメだなそんな事、言ってちゃ。」
「そうそう。」
「「先輩!」」
「女の強さはな、見た目じゃないんだよ。」
「いくら可憐に見えても、いざという時は男より強いもんだ。」
「先輩、何をいってるんですか?」
「そうっすよ、俺たちは騎士。弱きものを守る強き存在っすよ。可憐な乙女が強いだなんて…」
「君たちも」「結婚すれば」「判る事さ」「「はははははははははは」」
騎士控室では、既婚騎士の乾いた笑いがこだました。




