8話 ---隊長内心---
うーむ、着替えさせられてしまった。
相手は騎士団長だからと気合を入れてみたのだが…
これで彼女が正装で来たら釣り合いが取れないじゃないか。
まあ、ヒロ君がさせたという事は何か意味があるんだろう。
とにかく予定していた通り、馬で出ようか。
「ちょっとまったぁー!」
「たびたび何だいヒロ君?」
「ナニ平服で馬に乗ろうとしてるんです? だれかぁー。オル兄さんに馬車を出したげてー!」
馬がダメならば歩きで視察するのか?
ルミ嬢とはそういった打ち合わせはしていなかったのだが。
結局、馬車で噴水近くまで乗せられたのだった。
待ち合わせ場所には…馬は居ないな。
まだ来てはいないのだろうか?
代わりに、可憐な女性が一人。
普段は、気にはしないが、今日は何故か目が離せない。
よく見るとルミ嬢だった。
騎士服の凛とした姿もいいが、このような可憐な姿も似合っている。
おっと、見とれている場合じゃないな。
「お待たせしてしまったかな。」
「いいえ、私も今来たばかりで。」
「いつもと違い可憐な恰好で驚きました。その姿もよくお似合いですね。」
騎士として、紳士としての社交辞令の言葉だが、今は本気でそう思い言葉となっている。
いかんいかん、
今日は仕事なのだ。
「ルミ嬢、では参りましょうか。」
手を出すと、まるで少女の様にその手に抱き着いてきた。
「ルミ嬢?」
「オルソン様。今日はよろしくお願いします。」
その笑顔は、とびっきりに美しかった。
今日は仕事なのだ。
ただ、
一生で一番楽しい仕事になりそうだ。




