5話 ---月市早朝---
さてと、確か待ち合わせは噴水前でしたね。
「月市を視察されたいとお聞きしましたが、よろしければ私がご案内いたしましょうか。」
オルソン様から誘っていただけるなんて。
うまく話を持って行ってくれたヒロ君に感謝だわ。
まだ早いですけど、もう一度確認です。
剣は持ったし、服装に乱れは…ないですね。
<トントン>
「団長、ルーフィン家よりフィロルウェイン様の使いの者が来られています。」
へ?
ルーフィン家より使いって、ナニ?
予定変更?
もしかして市の視察中止?
「うむ、通せ。」
部下の前でうろたえた態度は取れません。
毅然と。
毅然とデス。
通されてきたのは侍女が三人。
三人ともヒロ君の専属だ。
私の姿を見たとたん…
三人とも何故、残念そうな顔をしたの?
不穏な様子に、私は部下にこう命じました。
「私はこの侍女たちと話をする。重要な話なのでしばらくはこの部屋に誰も入るな。」
「了解しました!団長!」
これでこの部屋には侍女3人と私だけとなりました。
これで多少の事は外に漏れないはず。
「人払いありがとうございます。…ヒロ様の言った通りだね。」
「非常に残念仕様。」
「先輩。やっちゃいますか?」
この子たち、侍女だよね。
侍女矜持って上位に従順のはずだよね。
なんか怖いんですけど。
「「「せーの!それー!」」」
あ~れ~~~!
私は騎士団長だ。
故に、当団騎士に後れを取ることなどない。
加えて言えば、騎士以外の者に後れを取ることなどない。…はずであった。
「騎士の方。団長様はすでに出かけられました。『私の留守を頼む』と伝言を承っております。」
「そうか、視察に出かけられたか。伝言ご苦労。おや?あと二人の侍女は?」
「団長様の案内役として付いて行かせました。それと、こちらは我が主よりの差し入れにございます。『御休憩時にでも召し上がってください』とのことです。」
「ありがとう、皆が喜びます。フィロルウェイン殿によろしくお伝えください。」
「はい、承りました。それでは失礼いたします。」




