2話 ---入門書籍---
「初歩魔法入門-赤」-青」-緑」-黄」
「魔法辞典」
「生活魔導具カタログ」
入門書と辞典は解るが、なんで「カタログ」が入ってる?
「-赤」-青」-緑」-黄」
懐中怪獣か? 引民か?
待望の魔法書入手である。
早速、読んでみよう。
「魔法とは魔力を糧に物体に働きかける術であります。」
定番だね。
「魔力とは神羅万象に存在し、この世の全ては魔力と切り離せない関係にあります。」
電子?陽子? 素粒子レベル?
「悪魔の眷属となるべく魔力を扱う術を与えられた存在が『魔獣』であり、それに対抗すべく、魔力を自由に扱える様に神から許された存在が『人』であります。」
『魔獣』も居るか。
今度父に、『魔獣図鑑』ないか、聞いてみよう。
しかし
『神』と『悪魔』か。
便利な言葉である。
一般道徳等、人々の暮らしに必要な決まりを『神の教え』として広めることは、集団生活には大事なことであろう。
他にも
『神に存在が許される』自分はここに居ていいんだという安心感。
『神が見ている』誰も見ていなくても悪いことはできないという犯罪抑止力。
『魔が差す』悪魔にそそのかされたと思うことで罪の意識の軽減。
『病魔に侵される』病気は悪魔のせいであり、何が原因なのか思い悩む必要がなくなる。
等々
自分より上位の存在『神』『悪魔』を創造(想像)することにより心理上のあらゆる問題がなくなる。
当然、他の訳の分からないものは『神』『悪魔』のせいにしてしまえば、事足りる。
神羅万象に魔力が存在するならばそれ自身に善悪はない。
それを、人と魔獣、神と悪魔に分けるのは、おかしな話である。
多少、疑いの目で読んでいく必要がありそうだ。
「ですから、魔力の強い『王族』『僧侶』『貴族』は神に近い存在と言えます。」
ここで『神』の名の元の権威序列か。明確に順位は書いていなくともその意図は見える。
「魔法にはそれぞれ属性があり、主に『火』『水』『風』『土』『雷』『心』『闇』『光』があります。それぞれ『赤』『青』『緑』『黄』『紫』『桃』『黒』『白』色分けされます。」
ここもテンプレ分類だね。色分けも一般的なイメージではある。
しかし、『火』は炎色反応次第でさまざまな色があるし、『水』や『風』は本来、無色透明だ。土は茶色ではないか?
『心』=『桃』なんて魅惑の魔法?お色気要員か?
「6歳の洗礼の際に、聖玉を介し神によりあなたの属性が決定されます。その際には聖玉は各属性の色を発します。基本、属性は一人に一つですが、まれに2属性、3属性を持つ者がいます」
ラーヤは安定しないと言っていたが、それを安定させるのが洗礼の儀式か。
しかし、属性を決めるのが『神』?
先天的な物なら、まあ、『神』ともいえるが。
「各魔法はそれぞれの属性にあったものを作り出したり、操作することができます。これを創術と操術と言います。通常はその2つが複合したものが1つの魔法として使用されます。」
魔法自身、そこまでは解析出来ているのか。
『作り出し』『操作する』
この2工程の分離理解はできているわけだ。
「また各属性を持つ者は、同属性の魔法に対して直感的な理解ができます。」
僕が魔法焜炉を『理解』出来たということは、僕は電磁波=『光』属性なのだろうか?
属性決定の聖玉に触れた覚えは………あるな。
あの宝玉が、ここでいう聖玉と同じ役割があるとすれば、あの時の白色光は僕の属性を表すことになる。
ここで注意しなければならないのが、聖玉=神が決定するのか?、聖玉=テスターが判定するのか? という点である。
本の記述通りならば、個人の属性は決まっておらず、聖玉光で『神』より属性を授かるということになる。
しかし
属性が生まれ持ったもので、聖玉光で自覚し安定するものであれば、ここに『神』の介入する余地はない。
いかにも『神』から授かったように『見せかける』事で『神』の権威は高められる。
前者の場合で聖玉を魔導具として考えた場合、これを扱うのは『神』ではなく『聖職者』=『人』ということになる。
つまりは
『魔法属性は人為的に決められる』
…恐ろしい事である。
結論を出すには早い。現物がないのだから検証のしようがない。
しかし、この本は宗教色が濃い事は確かだ。




