4話 ---模擬戦記---
「きゃっ!」「いやん!」「あん!」
さすがに模擬戦中に揉む(どこを?)ことはできないので、走り掛け中に尻を叩くだけにしておいた。
最後の一人の尻を叩こうと思ったが、
<ガキンッ!>
剣でガードされてしまった。
「フィロルウェイン殿。少々おいたが過ぎるのでは?」
「いえいえ。これが当騎士団の流儀ですので、了承していただきたいのですが。」
「「「団長!私たちの仇を取ってください。」」」
ふむふむ。
皆より年上の御姉様だが、団長さんだったか。
「フィロルウェイン殿もライヤーン将軍から剣の手ほどきを受けているのでしょう。ならば私の弟弟子ですね。」
「そうですか。どおりで剣筋が師匠に似ているはずですね。お名前をうかがっても?」
剣筋は師匠に似ている…が、言うなれば『真面目な師匠』だ。対処しやすい。
師匠ならここにフェイントやらミスディレクションやら搦め手が割り込むんだが…
「姫百合騎士団団長イルミナス=ラウトという。」
「そうですか。それでしたら『ルミ姉さん』とでもお呼びすればいいですか?」
そういえば、師匠が公爵家に来て何年になるんだろう?
5年?10年?
搦め手を覚えたのって団長になってからと聞いていたから、その前の教えならこの剣筋になるのか。
では、今の師匠の技を拝借して…
あらぬ方向を見て、
「あっ!」
と、声を上げる。
声を上げずに視線だけでも誘導できるが、ここは子供らしく声をあげてみたのだ。
最近のオル兄さん達はこの手には引っかかりにくくなったが、大抵の騎士では所見での対応は難しいだろう。
意識がそちらへ行った瞬間、纏っていた緑魔力を脱ぎ捨てるようにその場を離脱。
魔力による空蝉の術だ。
魔力感知では、まだ僕がそこにいるように感じているだろうが、視線を戻すとそこに僕は居ない。
僕を見失ったタイミングで背後に回り、首筋に剣を当て
「チェックメイト」
「…まいりました。」
「でどうでしょうか?王妃様。」
「さすがはヒロちゃんね。ハルちゃんもすごいわね。力押しでねじ伏せちゃって。」
「はい、ミレニーちゃん。力だけはヒロ兄には負けません。」
「頼もしいわね。イルミナスはどうですか。」
「ははっ。完敗にございます。」
「洗礼前の子供ですらこの腕なのです。これを機会に皆もルーフィン騎士団から何かを学んでくださいね。」
「「「「「「「はい!」」」」」」」




