5話 ---侍従兄弟---
やったよドコデ。専属だよ。
落ち着けモドア。まだ内定状態だ。しかし俺たちは運がいい。同じ屋敷で働けて、同じ主の専属になれるのだから。
そうだね。
で、今日、何食べた?
ナンノコトデショウ
とぼけるな。なにかいいものを食べたことはわかっている。お前が感じたことは薄々俺にも感じられるのだ。
クワシイコトハ、フィロルウェインサマニオキキクダサイ
うーん守秘義務か。そーなるとよっぽどのことなんだろうな。
大丈夫、明日には食べれるよ。
本当か? 先に食べたお前が恨めしいが、明日を期待して残りのお勤めを果たすとしよう。
「モドア。この父上宛ての書類を執事長に。内容は専属の申請書です。後、面会予約を。おいしいデザートができたので一服しませんか と伝えてください。」
「フィロルウェイン様。私はドコデリットです。」
「あっゴメ…と」
フィロルウェイン様は、ある意味では、貴族らしくはないが、俺たちを各個人として見てくれる主らしさはある。
でもなんで3歳児に頭のぞきこまれにゃならんのか?
その上女の子に櫛をいれてもらうなど、恥ずかしいったらありゃしない。
と、その結果がこれか。
いつもは、モドアの顔をみて違和感があったのだが、今はしっくりくる。
そうか、鏡で見た自分の顔だ。
フィロルウェイン様はこのことを解ってらっしゃったんだろうか?
しかし、頭をのぞき込まれたことは謎である。
おや、執事長より連絡ですか。面会予約が通ったようです。
「ドコデ。氷室からデザートの箱1箱持ってきてください。」
フィロルウェイン様は1カップ、箱から取り出しバーバラーヤ様にあずけられ、箱を再び閉じられました。
御頭首執務室へフィロルウェイン様をエスコートしようとすると、
「執務室へはモドアに付き添いをお願いします。ドコデは少しの間休憩していてください。ラーヤ。後をお願いします。」
「かしこまりました。ヒロ様」
出鼻をくじかれたうえ、バーバラーヤ様にお茶を給仕してもらうなど、とんでもない事態に陥っている。落ち着かん。
少しも休憩にならんぞ。
[ぷるん]
ん?なんだ?
「ヒロ様が、弟だけ味わっては不公平だろうと、取り分けておいたものです。食べてみて何か意見があれば、遠慮なく言ってほしい。との事です。」
なんという心遣い。そうなれば、遠慮しているなんて男が廃る。
「うっ、うまい!」
モドアが戻ったら自慢してやろう。
「休憩のお茶は、バーバラーヤ様に給仕してもらいましたが。なにか?」
モドアの悔しがる顔が目に浮かぶ。




