3話 ---賢弟起床---
「あ~!ははうえずるい~!」
息子が起きたようですね。
「『ずるい』とは聞き捨てなりませんね。」
「ぷりん。ひろにぃが、ははうえといっしょにたへるように、もらせてくれたものです。かってにたへちゃダメー」
「それは済まぬことをした。ゆるしてたもれ」
たった数時間、アヤツの元を訪ねただけなのに、息子が成長して見えます。
「ひろにぃがいってました。『もっへかえるまでガマンすれば、ははうえがほめてくえる』と。だから、ふぁ…ぼくはもっとたへたいのをガマンひた。ははうえは、ほめてくえなのれすか?」
あの息子が妾以外の言いつけを守るなどあったろうか?
いや、たんに言うことを聞いた訳でなく、この母に褒めてほしいがために我慢したというのかや。
何ともいじましい息子じゃ。
それにしても、妾を出汁に使ってまで息子を手懐ける手腕、さすがじゃ。
「ファルシオンや。よく我慢しましたね。えらいですよ。」
「やっらー!ほめらえた!」
褒めるだけでこんなに喜ぶとは。
妾もこの子の教育を見直さねばなりませんねぇ。
「ひろにぃは、『ぷりんは、ははうえといっひょにたへるとおいしい』といっへまひた。ふぁ ぼくが、ははうえのぶん、つくる。そこの。おさらとすぷぅんを、ここに。」
息子は言葉足らずでも、ちゃんと侍女に指示をするとは。
それに自分の事を「ボク」というなど、どれほど成長してきたのやら。
一生懸命、つたない手で妾の分を用意してくれるなど(貴族としては褒められた行動ではありませんが)母親として胸にくるものがありますねぇ。
…[プルン]
「れきたぁ。もういっこ」
…[プルン]
なんとかわいい揺れ具合ですの?。これなら別の意味で男性を虜にしてしまいかねませんねぇ。
「ははうえ。いっひょに『いららきまぁす』しよ」
「何ですその『いららきまぁす』とは?」
「たへるまえに、こへをいうと、えらくなったきに、なるのれす。」
さっきの侍女報告にはなかったですね。
侍女をにらむ。
ん?追加報告?食事の前の聖句の様なもの?しかし簡潔ですね。
でも、
いままで聖句のセの字も言わずにがっついてた息子が、簡潔ながらも言うようになるとは…
「いただきますわ」
「いららきまぁす」
…
…
「おいひぃ。ひろにぃ、うそいっへなかっら。ははうえといっひょらと、もっとおいひぃ。」
「…なぜでしょう?さっきより美味しく感じます。ファルシオンが用意してくれたからでしょうか?」
息子との距離が縮まった気がします。
しかし、アヤツの手の上で踊らされている気分もあり何とも釈然としませんわねぇ。
妾の目で直接、見極める必要がありそうですねぇ。
「ぼくは、ひろにぃが、だいすきになりました。」
なんとも息子からの爆弾発言。
え~?兄弟でBL?禁断?薄い本売れちゃう~?
「もひろん、いひばんだいすきなのは、ははうえです。」
な~んだ、家族愛か。ケッ!
…
…
…
どうも、キャラが崩れがちですわね。
息子の成長に驚き過ぎなのでしょうか。
「また、ひろにぃに、えほんよんでもらいたい。かっこいい、おひえれもらいたい。」
「そうですね。こんどは母も一緒に参りましょう。」
「やっらー。ははうえといっひょ!」




