8話 ---朗読再開---
この後も何冊か読んであげる。後は仕込みはしていないので寸劇は無しだ。
「ひろにぃ。あの、えぃやぁはないろ?」
うーん、覚えていたか。
プリンインパクトではごまかせなかったか。
「あれは、前もってしっかり打ち合わせしておいて初めてできるんだよ。
絵本全部をあれでやろうと思ったら、何日も打ち合わせしなきゃいけない。
昨日の今日でそんな時間はないだろ。
あのワンシーンだけでもハルに楽しんでもらおうと思って、侍従と侍女に相手役を頼んでおいたのだ。」
実を言うと、それほど綿密に打ち合わせしていたわけではない。
流れを伝えると、二人とも乗ってくれて、実際やっていたのは、ほとんどアドリブだ。
「ハルにもれきる?」
「物語を一つ、何も見ずに語れるようにならないと無理かな」
「じゃあ、ひろにぃは、れきるろ?」
「では『桃王子』を語ろうか」
内容はほとんど桃太郎だ。違いは。
『桃が流されてくる』⇒『桃の入った籠に乗って流されてくる』
『犬猿雉が自分を売り込み』⇒『狼猿鷲に餌をあげたらなつかれて』(もちろん喋らない)
『鬼』⇒『山賊』
『めでたしめでたし』のくだりでは
山賊退治の褒美のため王宮に呼ばれて、自分そっくりの王子に出会う。
王子は、自分の双子の兄であったのだ。(桃○郎侍かッ!)
しかし、自分は王位を継がず、育った土地の領主となり、養父養母と共に末永く暮らしましたとさ。
「ひろにぃ、すごぅい。」
エッヘン。である。
3歳児にえばっても仕方ないのだが…。




