4話 ---愚弟来襲---
三歳児言葉がお聞き(お見?)苦しいとは思いますが、ご容赦を。
「あにうえ。ころたびはおまねきいららきありがてうごさいます。」
一応、礼儀作法は叩き込まれてきたらしい。
「ようこそ、ファルシオン。よく来てくれたね。」
侍従一人+傍付き侍女一人を連れて、弟がやってきた。
早速、絵本を読もうか。
「ラーヤ。『フリード立身伝』を取ってください。」
僕が最初に読んでもらった騎士物語だ。
「かしこまりました。ヒロ様」
弟が驚いてた。
「あにうえは、しようにんほ、なまえでよぶろ? それに『ひろさま』って?」
弟の周りでは名前で呼ぶ使用人はいないのかな?
母上は気位高そうだから下の者を名前で呼ぶのも嫌ってそうだな。
「専属に対しては愛称で呼ぶようにしているよ。名前で指示を与えることで、気持ちよく仕事に励んでくれるんじゃないかな。」
三歳児には難しいか?
「僕の事も愛称で呼ばせることで、会話が短くなり伝達がスムーズに…」
弟が湯だってきた。
「それにお互いにだけ通じる名前なんて『かっこいい』じゃないか」
弟の顔が晴れた。やはり男の子には『かっこいい』が正義なのだ。
「ふぁるもせんぞくがほひい。『かっこいい』したい。」
これはちょっと無理だろう。わがままは言えても指示までは出せないうちは。
「ファルシオンよ、絵本も読めないうちは専属を持つことはできないよ」
「え~!せんぞくがほひい。せんぞくがほひいョ~。」
このままじゃ暴れだしそうだな。
「絵本が読めるようになるまで、文字を教えてあげよう。読めるようになったら父上にお願いしに行こう。一緒にお願いしてあげるから」
「ほんろ?」
少しおちついたか。
「そうだ、僕らも二人の時はお互い愛称で呼ぼう。兄弟二人の秘密なんて『かっこいい』だろ。」
「やっらー、『かっこいい』れきる」
うん、食いついた。
「僕は普通なら『フィロ』なんだけどもっと発音しやすいように『ヒロ』と呼ばせている。ファルシオンも『ヒロ兄』と呼んでくれると嬉しいな。」
「ひろにぃ?」
「そう。」
「じゃあ、ふぁるは?」
「同じようにすると『ファル』は『ハル』かな?そう呼んでいいかな?」
「『はる』…いいよ。ふぁるは『はる』」
つかみはOK。というとこか。
「ハル。自分の事を言うとき『ファル』ではなく『僕』というと『かっこよく』見えるぞ。」
「ファ、ぼく、かっこよくひたい」
「言い直しでもいいからゆっくり慣れていこうな。」
『秘密』と言っても、ハルの傍付き侍女もここにいるから、今日の事は母上に筒抜けだろうな。




