1話 ---秘密儀式---
儀式部屋の中。
目の前に鎮座する水晶玉。
僕は、吸い寄せられるようにその水晶玉に触れてみた。
とたんに、まばゆいばかりの白い光が当たりを包み込んだ。
と同時に、自分とは異なる者の記憶が流れ込んでくる。いや、本来の『俺』の記憶?
揺さぶれれて我に返る。
間近に見える父の顔。
悲しそうな嬉しそうな何とも言えない顔で、抱きしめられた。
僕の名前は フィロルウェイン=ルーフィン 3歳である。どうやら上位貴族の長男らしい。
3歳ではあるが、なぜか23歳まで生きていた日本人「古田博文」の記憶と意識が覚醒し『僕』の意識と融合した。
結果、見た目は子供な名探偵、以上の状態になってしまった。
ラノベは楽しく読んだし別段[転生もの]は嫌いではない。しかし現実的には記憶を持ったままの『転生』は起きないと考えている。
記憶や意識・精神は、脳内の配線、電気信号に由来するものであり、記憶を持ったままの転生なんぞ、脳内情報がすべて転写されないと不可能である。
『お約束』ならここで『神』という上位存在の介入があるはずだが、会った記憶はない。(信じてもいない。)
となると、この状態をどう説明づけていいものやら。
まあ、事情を知っていそうな父に聞くのが一番なのだが、『僕』の言語脳が3歳だったもので、言語自身、3歳児程度しか喋れず、聞きたい事ががこっちの言葉で出てこない。
日本語なら自在に喋れるかとも思ったが、舌が回らず噛んでしまった。
喋れても、理解できる人が皆無なので意味のないことだが…
まあ、これらの検証は後回しにして……眠い。
目をこすっていると、侍女に手早く着替えさせられ、ベッドに寝かしつけられた。
とりあえず、おやすみなさい。